『根源となりうるものは、今の自分の意思しかない』
万物の生の綻びが視える少女を描く劇場アニメーション「空の境界」初長編となる第五章は、第一期での時系列シャッフルを多平面展開とした真の敵との邂逅と死闘によって、いま社会現象となっている一人の男の生き様の根源となるダークファンタジー映画の傑作。
長編映画らしい時空を超越するジャンプカットの多用や作品内のシャッフルがキマッていて、先に見せる未来のシーンが伏線となっているのはさながら「ダンケルク」のようであり、これがクライマックスでラスボス相手の戦術となっている演出も心憎いものがある。
度重なる飲酒運転によって事故を起こした家族に対する社会的制裁は特筆すべきものがあり、ドアに誹謗中傷文を書かれるだけでは済まされない時代においては意義を強めて、善意のつもりでいる悪意の第三者を前にしては「生きる」という意思でしか生き残れない。