つっちぃ

霧の淵のつっちぃのレビュー・感想・評価

霧の淵(2023年製作の映画)
4.5
《霧の淵》
大自然の中で生かされている"今"は"今だけ"のものではない。"目に見えるものがすべて"だった頃から"見えないもの"に気づき始めるイヒカ。極端に削ぎ落とされた言葉の中で画面に映っていないものが饒舌で騒々しい。風の音、木々の音、鳥のさえずり、時の気配。

娘の帰りを待つ間の母と近所の人との茶飲み話、来客を饗す宴の席の長老達のありがたいお話、イヒカの座る縁側のガラス戸を揺らす風、衣擦れの音、時を刻む秒針。周囲の声や音の中にこそある自分。いま、ここにある自分も誰かの"ほんの今だけの部分"であるということ。。
現状年ベス1位です

"まだ子供だから"というイヒカはもう子供ではない。現実プラス少々のホラーとファンタジー。日常を取り巻く不穏さは"これまで"を"これから"に広がり続く。傑作✨

両手をポケットに突っ込みやる気なく歩くイヒカ。代わり映えのしない暮らしに彩りを与えるのは祖父シゲ兄だった。母とイヒカが2人で歩くシーンが秀逸✨演技をしていない演技無言のイヒカ役の #三宅朱莉 さん。オーディションで抜擢された新人さんとは信じられません。
つっちぃ

つっちぃ