老人XY

怪物の老人XYのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
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怪物だーれだ、と、公式のワードに反応する前に問いたいことがある。それは
怪物ってなーんだってことだ。
なぜそれが化物ではないのか。妖怪ではいけないのか。悪魔では?鬼では?モンスターでは?動物じゃあダメなのか。といったところで、さて英題ではどうなっているのかというと『Monster』だそうで、Monsterを英英辞典で調べると出てくるワードの1つとして気になったのが「cruel and evil」

日本語の意味は「残酷で邪悪」

もっとわかりやすく「バカ」と言ってもいいかもしれない。
本作を観賞する前にみた作品でこんな台詞があった。
「無知と偏見がなかったら地球は楽園」

私は無知である。私には偏見がある。
私は、主義者ではないが無意識に差別をしまくってる自覚がある。差別的な発言を他者が口にしても、その場の空気を乱すのが、そして今後の自分の快適さを損なうのがめんどくさくて、ヘラヘラと笑う日々だ。この世間に取巻かれて生きているのが本当に嫌になる。しかし依存しきって生活している。自分の弱さが、卑怯さが、傲慢さが、未熟さが、嫌で嫌でたまらない。こどものままでいる自分が。
こうして言語化して、うっすら「多少はマシ」だと思っているフシがあるのも超絶キモすぎる。

‥‥‥それはともかくとして。
ある人はこう言った「バカは状態である」と。
またある人はこう言う「誰もが誰かにとってはバカなのだ」と。
そしてこの前読んだ本にはこう書かれていた「バカとは課題」

さて、今回わたしたちに突き付けられた課題とはなんだったのだろう。きっとそれぞれ持ち帰った宿題は違う。

薄汚い大人たちなんかどうだっていいけど、こどもたちにはどうか人生の序盤を幸せな形で生きていってほしい。そしてそのために大人たちには救われてほしい。それなら願える。こどもたちのために、大人たちは自分の人生をちゃんと生きてほしい。依里のお父さんと、それから名前も覚えてないイジメっ子の家庭よな。

私の中でとりあえず今出せる意見は「怪物とは哲学のない大人である」ということ。疑問を持たない人間。自分で考えない人間。しょせん言葉なんて他者が作り上げたものを借りてるだけで、徹底的なオリジナルなんてありえないとも言えるけど、自分で、世界や言葉の概念を何度も何度も解釈してみることにはきっと意味がある。
自分とは?他者とは?社会とは?物語とは?
その時代、その社会で良いとされる価値観に適応し過ぎると怪物になる、気がする。それを怪物と呼ぶのもあんまりではある。だってつまりそれは“いい子”じゃん




《責任を取らないうちはなんだって自由に言える》

本作の後にオススメしたい作品としては…
まずアニメの「事情を知らない転校生がグイグイくる。」1話だけでゲロ吐くくらい泣いた。
映画だと「明日、君がいない」「ミスターノーバディ」「トウキョウソナタ」あたりが“怪物だーれだ”“宇宙の収縮”“ブオーーーー”などに引っかかった人に刺さるもんがあると思われる。
あと“誰にでも手に入るものがしあわせっていうの”からは「存在のない子供たち」を思い出した。日本という豊か過ぎる生存環境に浸りきって甘えきった御客様思考でモラトリアム人間の自分が考える“誰にでも手に入るもの”ってなに?“誰にでも”って誰?




あ、あのゲーム、イングロリアス・バスターズでもやってたやつよな!楽しそう!

脚本段階での題名は【なぜ】だったそうです
老人XY

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