みかぽん

怪物のみかぽんのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.9
登場する人々それぞれが自分の理解を超えた存在と対峙し、その過程で心の中に怪物を作る。そしてそれが相手に、あるいは別の脅威となって伝播して又別の誰かを追い詰めて行く。

人はどうして頭の中で持ち得る知見だけで情報処理し、答えを繋ぎ、思いたいように思い込んでそれを全てとするのかな。箱の中身を一方面からの視点を答えと結論し、そこに与さない相手を糾弾するんだろう。それは元々の無知であったり、過去の経験や情報集積からの結論、思い込みであったりなどの様々なんだけど。

本作は登場人物それぞれの視線で語られている。当初、母親に〝死んだ魚の目〟と言わしめたそれらも、母親の目にはそう映ったのだと後々気付かされる。百歩譲って仮にそうした要素があったとしても、対峙する相手に「心がない」わけではないし、事実、本当の答えは母親の中にある「確信」とは一致していなかった。

それぞれの視点で語り始めると取り留めがなくなる(伝えたいことの補強だと思ってる)からここではしないけど、自分自身だってこの登場人物たちの誰かになり得るし、無意識の言葉で誰かを追い詰めている可能性だってあるはずだ。何故なら、自分は違う、自分はそうじゃない、であってもそれはあくまで自分自身の主観に他ならないのだから。
(一見、攻め所の集積?である校長が、この物語の主人公の気持ちを理解し、本人の心の底を汲んでいたりなんだけど、それを当人たち以外、他の誰もが知らないこのシーンを、私は一番好きだったかも🥲)
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