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ゴジラ-1.0のよのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.0
小さいころプラモデルに挑戦したことがある。金ピカの姫路城(白さが売りなのに)と普通色の熊本城を作ろうとした。
完成できなかった熊本城は父が引き受けてくれて、もともとのキットにはなかった塗料やら素材やらを使って綺麗に仕上げてくれた。プラスチックの上から塗りかさねた黒は本物とおなじような重厚感がしたし、緑のモサモサで再現された芝生との対比も美しかった。
面相筆を扱う器用な手先をまだ覚えている。

父は子供時分よくプラモデルを作ったらしい。モーターで動くやつがいちばん難しいのだと言っていた。戦車や軍艦みたいな。
私はそれを聞きながら、田舎の、昭和のおもちゃ屋さんの棚の、いちばん高いところでガラスケースに飾られている小さな戦車や軍艦を想像し、また、それらに対する子供たちの憧れを想像した。
そんな田舎少年の姿を連想するからか、プラモデルってなんかほんとうに好きなんだろうな、作っていて楽しいんだろうなって印象があるし、たとえ人に見せるためだったとしても可愛らしいというか、純粋さを感じる。

このゴジラの、特撮の粋を詰めこんだようなミニチュアを作った人も、やはりこんなふうにプラモデルが好きだったのだろうか。
もちろん趣味と仕事では求められるレベルが違うから、一概にただ楽しいというわけにもいかないだろうけど、でもやっぱり作っていて心躍ったんじゃないのかな。とくに軍艦には血が激る、などと言いながら。
制作チームの雰囲気や出来上がった映像を見ていると、なんだかそんな気がする。

ミニチュアに限らず、もしそういう「好き」の延長線上にアカデミー賞があったのだとしたら、それはほんとうに価値のある最高の賞だとおもう。私は日本のいち映画ファンにすぎないけれど、それでも嬉しくて泣きそうになった。
制作チームの方々、ほんとうにほんとうにおめでとうございます。
よ