ドント

禁じられた遊びのドントのレビュー・感想・評価

禁じられた遊び(2023年製作の映画)
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 2023年。ルネ・クレマンの名画の方ではない。幸せな生活を送っていた伊原だったが、妻と子が交通事故に。息子は奇跡的に蘇生するも妻は死に、悲しみに暮れる息子は伊原に教わったウソの「おまじない」を行う。時を同じくして伊原の元同僚、今はカメラマンをやっている倉沢の身辺で、異様な出来事が……
 原作未読。こんなひどい映画は観たことがねぇと嘆いている人がいたためハードルをコタツのコードくらい低くして観たせいか、苦しみは少なかった(個人の感想です)。とにかく話が動き、オバケが出たり怪異が起きたり子供が変なことをしたり、セクハラを越える犯罪者上司が襲ってきたり奥さんが孥ヤバかったり首がもげたり諏訪太郎が清水ミチコに殴られたりと場面が停滞しないのだ。
 説明台詞とかはあるものの、なんかエモげなドラマとか心情を垂れ流す時間が少ないのである。このへんの淀みのなさ、とりあえず今何かしら起きている感じは好ましかった。ただし「淀みがない」「何かしら起きている」とは言え「えっ? なに?」「ちょっとわかんねぇな……」というストレスはある。すごいある。
 どんどんハチャメチャが押し寄せてくるものの、ひとつひとつに説得力がいまひとつ欠けるのである。これは元より中田秀夫が職人監督というか、「はい脚本でーす!」「あいよっ! ほいっ一丁上がり!」ってな下町ラーメン屋気質であるからして、脚本の出来とか撮影監督の力量とかそういう周辺の様々がうまいこといくと、もっと怖いというか面白いというか、盛り上がる映画になるのではないかと思う。
 これはネタバレだが後半、念動力を使える全裸の怪物が斧を持って襲ってくる。もう一度書くが、念動力を使える全裸の怪物が斧を持って襲ってくるのである。これを成立させるには相当な志やそれまでの積み上げが要る。またはチョケてギャグに走ってもよかろう。中田秀夫は「はい斧を持った全裸怪物ね!」と、そのまま撮る。結果マジでもチョケでもない、「そのまんま」が立ち上がってきて、こちらはどういう気持ちで観ていいのかわからなくなる。
 この力の入らなさというのには凄味すら感じる。それはさておき心は迷子になる。あとクライマックスの落とし方はアレですね、上下巻の小説を無理矢理5話に縮めたNHK時代劇「夏雲あがれ」にそっくりだったので、偶然にもダメージが小さかった。知らずに観た人は呆然とするかもしれない。あと全体に、最近の尖ったホラーの寄せ集めと劣化コピーを思わせる感触がどうしても残る。
 とまれ、役者はいい味で好演しているし(ただ、橋本環奈はこういうホラーには不向きの役者ではなかろうか?)、前述のように面倒な説明とかエモシーンがないので、悪くない映画です、と締めようと思ったのだけれど、「ふぇ?」と呆れる瞬間が多々あったので、悪くないというほど良くはないかもしれない。つまり、映画はね、観なきゃわかりませんよ。私も含めて他人の感想はアテになりません。ぜひご自身の目でご覧ください。
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