ドント

忌怪島/きかいじまのドントのレビュー・感想・評価

忌怪島/きかいじま(2023年製作の映画)
-
 2023年。なるほどね! なるほど! 沖縄の島でメタバース・VRの開発に携わることとなった青年、しかし顔見知りだった女性科学者は青年の到着前に不審な死を遂げており、彼女の記録には仮想空間に存在する謎の赤い女が。これはバグなのか? それとも……
 いい所とよくない所の落差が激しい作品であった。清水崇村シリーズはいつもそうですが……。「デジタル空間に幽霊が現れる」というのは個人的にはかなりワクワクもんの設定で、うまいこと落とし込めば虚実の皮膜、現実とバーチャルと冥界の境、などと相当に面白い作品ができるだろうなと期待していたはいいものの、まぁ、うまいこと落とし込めてなかったね!
オバケ普通に現実世界に出てきちゃうしね! 
 終わってから振り返るとデジタル空間とかVRとか脳波とかは特になくても成立したというか、デジタルが結局は「石碑を壊した」くらいのトリガー的要素しかなかった気がするし、なんかメタバースとか流行ってるからやっとく?感を感じたが、僕は大人なのでいちいちあげつらわない。
 が、怨念の島ホラーにデジタル要素を突っ込んだせいで、お話が蛇行しすぎである。過積載なのだ。勘定を合わせたいのはわかるが「VR世界に現れた赤い女の姿がはっきり見えないので、ユタの脳波を取り込んでみる」とか、なんか微妙に勘定が合わないのである。しっくりこない。具材が混ざっておらんのよ。
 ただ一方でなかなかに捨てがたい部分もあり、たとえば「二重の呪いという背景」であったり「積年の怨みの解放」であったりする。パソコンいっぱいの空間の床に水が染み出てくるとか空から落ちてくる折り鶴とか海に建つ朽ちた鳥居とかのイメージもいい。村八分どころか十分にされている老人が、唯一優しくしてくれる女子高生にマルバツをつけてもらった割り算の答え合わせをやっているシーンなんて実に暗鬱、かつ温かい交流を端的に示す描写でとてもよいではないですか。
 あとその女子高生役の娘さんは若いのにすごく存在感があるなぁとか、なだぎ武はどこにでも馴染むなぁとか、水石亜飛夢はまた頭に変なものをつけてるなぁとか、やっぱり「赤い女」って出てくるだけでそれなりの貫禄を発揮するなぁとか考えた。
 ただいかんせん映画全体としては面白くないため、このような「よさ」もスーッ……と右から左に流れていくのであった。照明とかロケーションとか、すごくこうリッチなので、もったいねぇなぁこの予算をもっと有用に使えねぇもんかなぁと思ったりした。デジタル要素に手ェ出したのが間違いだったのかもしれん。まぁだいたいそういう感じです。
ドント

ドント