王冠と霜月いつか

忌怪島/きかいじまの王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

忌怪島/きかいじま(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

バグじゃない、呪いだ。

ホラー映画の雛形が確立されて約壱世紀、制作者の苦労は、どうやって新しくアイデアを盛り込んで魅せて行くか?という事になるかと思われますが…いや、新しいアイデアなんて、既に出尽くしているんでしょうね。出資者の言うところの『(ヒット映画に)似ていて、ちょっと違う』作品を如何に作り出せるか…ですかね。…大変だな。

6月24日
清水崇監督と、監督の村シリーズ作品で(監督は村シリーズという括りはお好みではないとの事)お馴染みの、大谷凛花さんがゲストのトークイベントに行って参りました。※詳細はInstagramに挙げてます。 今まで、何人かの映像作家の方のトークイベントに参加しましたが、清水崇監督は最もエンタメ意識強めのサービス意識満点の方でした。『笑い』と『恐怖』は紙一重、同じコインの裏と表と言ったりしますが、トークスタイルや作風がそれを表しているなと感じました。村シリーズの為に遅れている(らしい)コメディ作品を楽しみに致しております。
そして、大谷凛花さん、綺麗でしたな~あの、犬鳴村で上からドンって落ちてくるヒトね(^_-)

さて…

舞台は横溝正史作品を彷彿とさせる閉ざされた島、古からの呪いの元凶が、島を使って新たな試みを実験的に行っているベンチャー企業『シンセカイ』の技術で顕在し島民達を恐怖に陥れるというログラインの作品です。

攻殻機動隊
ガダラの豚
マトリックス
ゼイラム
リング
回路
ウルトラマンネクサス
HUNTER×HUNTER G.I.編
サマーウォーズ
すずめの戸締まり
等々鑑賞中に想起された作品

実在する島をVR上に展開すること=あの世とこの世の境界を曖昧にする効果で、島に伝わる呪いの元凶、赤い女『イマジョ』が顕在してしまうというのはとても面白いなと思います。強い怨念は時に最新最適な方法で現れるのですね。一方は最先端技術で一方は古からの伝承的な事柄という対比。
怪談系YouTubeを観ているとちょくちょくワードは耳にする『ユタ』という存在。ウィキ先生によれば…ユタは、沖縄県と鹿児島県奄美群島の民間霊媒師(シャーマン)であり、霊的問題や生活の中の問題点のアドバイス、解決を生業とする…との事ですが。そのユタの能力をスキャンしてアルゴリズム化すると、それまでモニターに居た?イマジョが像を成してしまいます。話の流れとして仕方ないとしても、ユタは自らの能力のデータ化は断らないといけなかったんでは?と思ってしまいました。

そのユタより、笹野高史さんの演じた『しげる』が良かったですね。正直、彼が実質的な主人公だと思います。その彼は母親が『イマジョ』憑きにあってしまった為に子供の頃から村八分の目にあって、それでも島で生きてきた人。
『シンセカイ』の雑用係として働き、寡黙で、三線を嗜み、一見何をしているのかわからない人。コミュニケーションを取ってるのは、島の女の子『リン』だけ。何らかのお祈りを日課にしているらしい所、子供たちに石を投げられ供えていた水の入った瓶が割れてしまうシーン、印象に残りませんでしたか?
「石敢當」と彫られた石板にお祈りする、しげる。そこで調べてみると…
※辻やT字路の突き当りに埋め込み直進してくる魔物を祓うとされる石板、起源は中国。もともとは“災いを取り除いて福を招く”目的だったものが、“魔物を駆除する”目的に変わっていったそうです。石に対する信仰から生まれてきたとされています※

そして、ユタのアルゴリズム化をきっかけとして、『イマジョ』が、しげるにもはっきりと感じられてしまうと、『リン』を守る為に秘密の祈祷部屋に閉じ込め、出てはいけないと伝えドアを縄で固定する。その祈祷部屋が、極狭で赤い照明と呪いの掛け軸と折り鶴と蝋燭と脱皮した蛇の皮が祭られている祭壇というオドロオドロシイもの。壁の奥には…。彼は、島民を守っていたのか?或いは、村八分にされた恨みで、呪っていたのかわからなくなります。
『シンセカイ』のコンピュータシステムを斧で破壊した時に、『イマジョ』を解き放て!と言っていたので、結局は、ユタと対局にあるキャラクターだったのかもしれません。でも、自分を人間扱いしてくれた女の子は守りたい。
沢山の折り鶴を高台から羽ばたかせて、最期のお別れをするシーンは何だか物悲しくなりました。

犬鳴村でも思いましたが、ホラー映画の怖がらせるシーンはやや控えめで、人間ドラマを多めに入れるのが、近年の清水崇流なのかもしれません。

『リン』が、しげるの三線を一頻り弾いてから、⛩️鳥居の下へ歩いて沈んで行くのは、彼女の気持ちを台詞で説明しないで表現する良いシーンだと思います。
ちょっと意外におとなのホラー映画でしたね。

結論は、もうわかりきっていることですが、
『人間が1番恐ろしい』
でした。制作サイドに、F島ジュリーKさんの御名前がクレジットされてるのが1番の呪いかな(笑)

“シンイチ…「悪魔」というのを本で調べたが……一番それに近い生物はやはり人間だと思うぞ ”
- ミギー