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マッチングのnetfilmsのレビュー・感想・評価

マッチング(2024年製作の映画)
3.2
 終わった直後、どうしてこうなってしまったのかと思いながら、首を傾げてしまった。そのくらい何もかもがダメで、話にならない。そもそもマッチング・アプリにはそれ相応の代償が求められるというアイデアそのものがとても映画になりそうにない凡庸な代物で、いかにも凡人が考えそうな理屈である。30を目前にして恋愛に奥手な輪花(土屋太鳳)の設定ならもっと冴えない女優を選択するべきで、あまり器用ではない土屋太鳳には向いていない。この内容ならKADOKAWAも中田秀夫や黒沢清、三池崇史に真っ先に声を掛けるべき案件ではないかと思ったのだが、エンドロールを見て納得した。原作も内田英治が書いている以上、監督:内田英治も動かせない。表の裏は裏で、裏の裏は表だからそもそも大どんでん返しの連発は悪手であり、映画におけるちゃぶ台返しは1回で良いのだが、何度も何度もサプライズを持ってこようとする監督の意図がそもそもわからない。マッチング・アプリに関わる因果が30年前のパソコン・チャット時代と二世代で結び付くというアイデアそのものも内田英治は最高のアイデアと思ったのかもしれないが、それ自体が凡庸で昭和的だと製作陣は誰一人として指摘しないのだろうか?

 母はいない父と娘の侘しい食卓というアイデアそのものが既に昭和で、令和世代にはまったく刺さりそうにないアイデアだし、ここに来て杉本哲太に付き纏うストーカーは流石にない。恋愛なんて瞬間湯沸かし器みたいなもんで、25年以上も誰かを想い続けるなんてことが他人との間に起きること自体がナンセンスで、これは偶然同じ地域に住んでいた3家族の仄暗い因果にまつわる物語なのだ。片やマッチング・アプリで出会った吐夢(佐久間大介)のステレオタイプな気持ち悪さには劇映画として流石に唖然とした。水族館の最初の登場場面なんて殆どホラーで、この時点で内田英治の観客をミスリードせんとする魂胆に妙に白けてしまう。その一方でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山(金子ノブアキ)の登場もまた、ミスリードを誘発する様な大袈裟な演出で、内田英治監督にははっきり申し上げてサイコ・サスペンスは向いていない。そもそもあの気持ち悪い遺体をあんなに長く映す意味がわからない。輪花の同僚の飛び降りに至ってはベランダではなく、小窓しかないはずの正面玄関からどうして落下したのか?そしてあの団地の無人部屋になぜ何十年も思い出の品がそのままなのか誰か合理的に説明出来れば教えて欲しい。真飛聖さんの刑事っぷりもこれでは職業の根幹に関わりかねない。佐久間君の人物設定も『デスノート』のLや永井聡の『キャラクター』のFukaseで既視感があり、流石にこれは乗れない。
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