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ポーカー・フェイス/裏切りのカードのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.3
 芝居の巧さに関しては私も一定以上のリスペクトをしているラッセル・クロウの2本目の監督作ということでワクワクした気持ちで劇場に駆け付けたのだが、開巻早々何ともおかしい展開に肝を冷やす。その幼少時代の回想場面の『スタンド・バイ・ミー』のような映像をただ何の情熱もなく繋いでみました的な幼少期の映像がラッセル・クロウが、エンタメ路線か芸術路線という2つの方向性の間で揺れつつも、果たして今作はどちらで行くのかを明らかにして欲しかったのだが、その中途半端に芸術的で、エンターテイメントにも片足だけ留まらんとする名優の煮え切らない態度に首を傾げる。案の定、中年となり無様な姿を晒す主人公こそが監督兼任のラッセル・クロウで、ほら見たことかと内面の呟きが聞こえるのは御愛嬌と言いたいところだが、監督デビュー作となった生真面目だが名作とは言えなかった『ディバイナー 戦禍に光を求めて』以上の醜態を晒す。

 億万長者のジェイクは、長らく疎遠だった旧友たちを自宅へ招待し、高額のポーカーゲームを開催する。だがそれは、ある復讐のための手の込んだ計画だったというのが今作の骨子なのだが、終わってみればポーカーゲームなんてさして重要ではなく、幼少時代に遺恨を残した禍々しい運命再びで、まったく心理戦ではなく、単なるB級アクション映画なのだ。このように再集結した中で突如スタートする処刑ゲームのアイデア自体は極めて福本伸行による『賭博黙示録カイジ』的であり、中田秀夫のラノベ的な密室ゲーム的であり、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』で、それ以上でも以下でもない。ブルジョワジーの主人公に訪れたあっと驚くような展開もアイデアとして見れば、「あぁっ」としか言いようがなく、自分の命の期限と逆算した主人公の企みそのものが悪手でしかない。終盤の大どんでん返しの連続からの最期のちゃぶ台返しは凡庸な日本映画の特権だと認識していたのだが、オスカー監督も同じ轍を踏んでしまっていることを認識し、少し寂しい気分になった。確かに役者は豪華だが、二転三転するプロットがこれではメリハリのある映画になりようがない。ラッセル・クロウは演技は一流だが、監督としての洞察力は三下に留まる。
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