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あしたの少女のsonozyのレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
4.0
職業高校に通うダンス好きなソヒが、担任から斡旋されたのは、大手通信会社の下請けコールセンターのインターン。
そこは、解約を求める顧客からの電話を受け、あの手この手で解約を阻止する仕事で、日々顧客から罵声を浴び続けながら、従業員同士の競争があおられ、もの凄いストレスにさらされる環境だった。
ソヒの成績は下位となり、契約書で保証されていた成果給も減額され、支払いも数ヶ月先だと先延ばしされてしまう。

こんなブラック企業でも簡単に辞められないソヒ。
高校では就業先が見つからない生徒も多く、ソヒが辞めると、就職率を高めるため日々戦っている担任の先生及び学校に多大な迷惑がかかってしまう。
ソヒは明らかに顔つきが変わっているのに、気づかない呑気な両親に相談も出来ない。
そんな中、ソヒの指導役の若い上司が、会社敷地内の駐車場に停めた車の中で練炭自殺をしてしまう。
ショックを受けるソヒは・・・

実際の事件を再現したという前半の展開。
明るかったソヒの表情が、どんどん暗くなっていき、見ているのが辛くなります。

そして後半に登場するのが、事件の真相究明に執念を燃やす刑事ユジン役のペ・ドゥナ。
未来ある若者を消耗品のようにこき使い、犠牲者が出ても、それぞれの事情・言い訳・犠牲者自身の問題などを語るクソ過ぎる大人たちへの怒りと、その根深さに途方に暮れる複雑な心情を演じています。

忘れられないのは、
担任の先生に相談に行くシーンのソヒ(キム・シウン)の涙。
ソヒのダンス友だったテジュン(カン・ヒョンオ)のユジンと対面するシーンの涙。
ソヒ、そしてユジンの足元に差し込む光。。

韓国、いやこの日本でも起こっているであろう、社会/労働環境の歪み。
ソヒのような犠牲者を二度と生み出すべきではないという願いを込めて作られたという本作の原題(英題)『Next Sohee』
競争社会の底辺で苦しむソヒを演じた新進女優キム・シウンが素晴らしかった。

※邦題はチョン・ジュリ監督の前作、ペ・ドゥナ出演の『私の少女』つながりにしたのでしょうが、分かりにくいですね。
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