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梟ーフクロウーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
3.7
 鋭利なピックが目に突き刺さる寸前のポスター・ビジュアルを見て、私はてっきりホラー映画だと思ったのだが騙された。実際は朝鮮王朝時代の記録物『仁祖実録』に記された怪死から着想を得た王朝サスペンスで、ショウゲートさんも流石にこのポスター・ビジュアルはほとんど詐欺ではないか(予告編を観たら予告はちゃんとしていた)?主人公は病の弟を抱える天才鍼医ギョンス(リュ・ジュンヨル)なのだが彼が盲目というのがミソで、心の眼で見るからこそ病人の身体の異変に誰よりも気付き、適切な処置が出来るのだ。前半は貧乏暮らしに始まり、弟が病弱でという涙ぐましい地点から始まるのだが、宮廷に召し抱えられた時点で突如、主人公の秘密が明らかになるのだがいやいや、これはあんまりではないかというか、冗談も大概にしてくれと思った。その時点からは『名探偵コナン』であり、『家政婦は見た』ならぬ『鍼医は見た』でそれ以上でも以下でもないというのが正直なところなのだが、この脚本の筋道はトリッキー過ぎて大丈夫かと心配になる。

 然し乍ら韓国映画ではお馴染みの曲者ユ・ヘジンにフォーカスする辺りからがユ・ヘジンの本領発揮というか、名バイ・プレイヤーの凄みがじわじわと滲み出してくるから不思議なのだ。宮廷で起きた密室殺人事件。被害者はギュンスの嘘を見破ったことで、地位の差はあれど深い友情で結ばれる。しかしある夜突然に闇夜の中で葬り去られる。17世紀の話だから当然、刑事も警察も出て来ない。宮廷王朝というある種ブラックボックス化されたもの言えぬ空間の中で、主人公が実は○○でしたというのが大まかな話の筋であり醍醐味なのだが、その点がおいおいマジかよ冗談だろと思わせる無茶苦茶な設定なのだが、二転三転する展開はエンターテイメント大作として十分だ。しかし日本人も韓国人もこういう仇討ち物語が好きだねと言わんばかりの展開は『半沢直樹』的で、一度も観た事はないがおそらく『トンイ』や『宮廷女官チャングムの誓い』辺りに着想を得ているはずで、ルックが映画ではなく思いっきりドラマのようで苦笑いを禁じ得ない。心なしか音楽の入り方もドラマっぽかったし、致命的なのは夜中のシーンが暗過ぎる。それに尽きる。
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