スワヒリ亭こゆう

春に散るのスワヒリ亭こゆうのネタバレレビュー・内容・結末

春に散る(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

僕は映画と同じくらいボクシングが好きです。
で、好きなもの同士が合わさると決して良い結果になるとは限らないんです。
例えば『ロッキー』なんかは僕は大嫌いなんですね。何故かと云うとシルベスター・スタローンはボクシングが好きなんじゃなくてボクサーのロッキー・バルボアが好きなんですよ。なのでスタローンが如何にボクシングの練習をしてないかが見てとれるからです。
ボクシングに愛を感じないボクシング映画は嫌いですね。
本作は横浜流星さんのボクシング技術が素晴らしかったです。よく練習してるのが伝わります。映画としての見せるボクシングだけではなく、本気のボクシング技術を身に付けているのが凄く伝わりました。素晴らしい役者根性だと思います。半端な練習量ではないでしょうね。

ストーリーは佐藤浩一さんが演じるアメリカ帰りの元ボクサー・広岡が一人目の主人公。初老になり日本に帰ってきて昔のボクシング仲間を訪ねる所から話が始まります。
佐藤浩一さんの白髪は見慣れないし、すっかりお爺さんになってしまいました。佐藤浩一さんのダンディーなイメージと本作の広岡という役は少し違っている気がしました。スポ根ドラマではなくて、ヒューマンドラマにしたかったんでしょう。
残念なのは橋本環奈さんの役があまり見せ場が無かった。広岡の姪っ子という役どころ。黒木将吾(横浜流星)と無理矢理に恋仲にした感じがしてしまい、必要性を感じない役でした。


⚠️⚠️⚠️⚠️ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️

⚠️⚠️⚠️⚠️ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️

映画という限られた時間の中では1人のボクサーを育てるのに時間が足りないんです。
ましてや将吾を世界チャンピオンにするには映画だと時間は足りない。
半ば強引にOPBF、世界タイトルマッチの試合が組まれていきます。そこに至る過程を重視したストーリーではあるものの、ボクシングを知ってる人なら世界チャンピオンが格下相手に試合をする理由がない。格下相手にかませ犬としての挑戦者は現在の日本のボクシング界ではあまりにも意識が低い。
井上尚弥という生きる伝説がいる現在のボクシング界を観ているので、尚更そう感じてしまいます。
ボクシングの試合は役者とは思えないボクシングシーンの数々。横浜流星さんは勿論、窪田正孝さん、板東龍汰さん。みんな凄かった。
けど、最後の世界チャンピオンとのタイトルマッチのラストラウンド。
それまでは迫力あるボクシングシーンだったのに急にストーリー重視のボクシングシーンになってしまったのは残念です。その方がボクシングを知らない人は分かりやすく楽しめるのかもしれませんが、あり得ないぐらいのクリーヒットの応酬は観てて冷めます。

やりたかったのは広岡の最後のシーンで、全てがそこに至るまでの過程なんだと思います。
桜が散る時の美しさの如く、ボクサーの最後を描いた作品でした。そこに拘りが見え、ラストはストーリー重視のボクシング映画になってしまったのが、それまでの素晴らしいボクシングシーンが勿体なく感じました。
全体的に良さげな雰囲気が漂ってはいるものの観終わった後の物足りなさを感じてしまう作品でした。