Foufou

ファイブ・デビルズのFoufouのレビュー・感想・評価

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)
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映画におけるレズビアンとは、ヘテロの私からすると、男性性へのアンチテーゼとでもいいましょうか、どうしても政治的な意図が感じられてしまうのですね。それはそれで良し悪しの問題ではありませんが、女性監督の撮るフランス映画を見ると二本に一本はそんな感じで、またかよ、となります。

ここでも火が象徴的に使われますしね。セリーヌ・シアマの『燃ゆる女の肖像』を想起しない人(見ていれば)はまずいないのではないか。火の意味合いは異なるにしても。

嗅覚がフューチャーされますが、これの使い方は弱いかな。帰宅途中の森のなかで母親が娘の嗅覚の鋭さに気がつく場面があるのですが、娘にショールで目隠ししてかくれんぼをする。娘は嗅覚でもって容易く母を見つける。ここのね、嗅覚だけを頼りに迫り来る娘と、嗅ぎつけられる母のそこはかとない恐怖がね、ちょっと上手く撮れてないと私は思うんですね。かくれんぼも、娘の特殊能力に気がついた母のする所作としては唐突過ぎるし。

セリーヌ・シアマが描こうとするものと似ているからつい比較してしまうのですが、シアマの撮る愛にはね、ヘテロにも充分感得される深さがあるというかね、愛の普遍性みたいなものに表現を届かせようとする気配がある。つまり丁寧なのです。女たちが台所に一列にならんで食事を作るシーンをフェルメールのような画調で撮ったりする。心動かされるわけです。

いっぽうのレア・ミシウスの描く愛は排他的で直情的で、背景の作り方が粗いというか。なんでお兄さんと結婚してんのか、わかるようでわからんし。

ただカラオケのシーンは良かった。カラオケボックスで歌うカラオケは嫌いですが、ああいうパブとかでMCがいて素人歌合戦みたいになる演出はいいですね。で、女たちが歌う、初めはたどたどしく、やがてもう一人に支えられて……。

ロケーションがアルプス山麓というのがまたなんとも絶妙。人種、性、ムラ社会……とテーマ性のはっきりした映画。少なくともホラーではありません。

Les Cinq Diables とはところでなんなんだろう。五感のことかな。
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