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aftersun/アフターサンのblackkazoomaのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.2
We know the perfect place

◇あらすじ
11歳の夏休み、トルコのリゾート地にやってきたソフィ(フランキー・コリオ)と、離れて暮らす父カラム(ポール・メスカル)。まぶしい太陽の下、二人はビデオカメラを互いに向け合い、親密な時間を過ごします。20年後、父と同じ年齢になったソフィは、懐かしい映像の中に、大好きだった父の、当時は知らなかった一面を見出していき──。


初見時、それこそ11歳くらいの感覚で観て、本作の構造を把握できないまま観終えてしまい、あわてて再見してラストでエグりにエグられました。(ここまで心が揺さぶられたのは『WANDA』、『こちらあみ子』以来か)

所謂「観る者に解釈や判断をゆだねる」作品で、説明的な描写がほぼ無く(ラスト近くの"Under Pressure"の歌詞くらいか)、暴力的なシーンがあったり、誰かが絶叫するみたいなところも無い(「トレモリノス‼」とは叫んでいたがw)。私の初見時のように油断して観ると「ひと夏の親子の旅を描いた退屈なノスタルジー映画」になってしまう。

監督のかなりパーソナルな部分が多く反映されている作品ではあるが、誰しも ある程度歳を重ねると「二度と会えなくなった大切な人」がいるだろう。説明を無くし、受け取り方の自由度を広げたことにより、より多くの人が共感できる作りになっている。
大人になったソフィと同様に記録(ビデオカメラの映像)と記憶以外の部分は映画を観る側が想像するしかないのだ。


ソフィを演じたフランキー・コリオは完成後の本作を観終わって、監督に「なんでこんな悲しい映画を作ったの?」と泣きながら詰め寄ったそう。私と違って感性の優れた御子だなと思うのでした~


◇雑記
本作のシャーロット・ウェルズ監督がニューヨーク大学在学中に撮った11分の短編作品『Tuesday (2015)』が「(11歳の)ソフィのその後」みたいな内容で再度エグられましたw
YouTubeでみれるので本作が刺さった方で未見の方は是非!

◆ネタバレな妄想↓













・愛する我が子には自身が経験した失敗や辛い出来事をさせたくないと思うものだろう。
劇中、カラムがソフィに暴漢から逃れる方法を真剣な表情で教えたり、「行きたいところへ行って、なりたい自分になれ」、「何でも話して。男の子やドラッグのことでも」と言う。
裏を返せばカラムが暴力を受け、思うような人生を歩めず、悩みを聞いてくれる人も無く、恋人やドラッグで痛い目にあっている過去が想像できる。
カラムが親に愛されていなかったことが分かる描写があるが、精神的に不安定なカラムが一生懸命ソフィに愛情を注ぎ、丁寧に日焼け止めやアフターサン(日焼けローション)、泥を塗ってあげるシーンがたまらんです。

・決死の思いでパパが買った絨毯を大人になったソフィが大切に使っているという描写は最後の最後に持ってきた方が「涙腺破壊力」が増したのに。

◆忘備録
マーガレット・テイト / Poems, Stories and Writings, edited by Sarah Neely (Manchester: Carcanet Press, 2012)
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