kuu

aftersun/アフターサンのkuuのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.8
『aftersun/アフターサン』
原題 Aftersun
映倫区分 G
製作年 2022年。上映時間 101分。
幼いころに父親と二人きりで過ごした夏休みを、成長した女性が回想するかたちで描き、世界各国の映画祭や映画賞で話題となったヒューマンドラマ。
トルコのリゾート地で31歳の父親と短い夏を過ごした11歳の少女が、当時の父親と同じ年齢になり、大好きだった父親の記憶をたどる。
監督は本作が初長編となるシャーロット・ウェルズ。
出演はドラマ『ふつうの人々』などのポール・メスカルをはじめ、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン=ホールなど。
監督のシャーロット・ウェルズは、主役のソフィー役選出のために800人以上の女の子をオーディションし、新人のフランキー・コリオを起用したそうな。

思春期真っただ中の11歳のソフィ(フランキー・コリオ)は、離れて暮らしている31歳の父親カラム(ポール・メスカル)と夏休みを過ごすため、トルコの閑散としたリゾート地にやってくる。
二人はビデオカメラで互いを撮影し合い、親密な時間が流れる。
20年後、当時の父の年齢になったソフィが映像を見返すと、そこには大人になって分かる父親の一面があった。。。

今作品を理解するには少し考える必要がある。
今作品には2つの意味層がある。
鑑賞後にすんなり理解できる明白な意味と、理解するのに多少の時間と考察を必要とする隠された意味である。
プロットの最も重要な要素のいくつかは、間違いなくスクリーンの外で起こるものであり、それゆえ観客の解釈の自由度が高い。
今作品に対する最も否定的な批評に共通しているのは、監督が重要なメッセージをもっと率直に語るべきだということやけど、確かに否めないとこはある。
しかし、監督とその語り口から "匙を投げる "ことを好むなら、この映画には失望すると思います。
今作品の感情的な衝撃は、見終わってからしばらくしてから来るかもしれない。
映画館で涙してた人もいましたが、個人的には見終わった後、暫くして帰り道にこの映画のことを思い出し泪しました。
主演俳優の演技は本当に驚異的でした。
ポール・メスカルは、非常にカリスマ的で好感が持てるが、明確な弱さを持つ人物を見事に演じていたし、フランキー・コリオは、すでに子供ではないがまだ思春期とは云えない少女を見事に演じていた。
彼女は父を心から愛し、恋しく思っているが、父だけではすでに物足りない。
ポールとフランキーの相性の良さは明らかで、二人のやりとりの信憑性は驚くほど説得力がありました。
映画の演出スタイルは、ゆっくりと控えめで、それにもかかわらず魅力的でした。
鑑賞者としては、このデビューしたばかりの監督が、控えめでゆっくりとしたインディーズスタイルと、鑑賞者の体験に対する敬意と配慮のバランスをうまくとっていることに脱帽しました。
また、音楽と撮影(オペレーター/編集者の仕事)は素人目でもかなりイケてるんじゃないかなぁ。
体験を大いに盛り上げてくれたし。
映画全体を通して美しく作られたショットの構図、色の一貫性、映画を通して繰り返され、心に残る美しい映像(澄み切った青空に浮かぶ色とりどりのグライダー)も気に入りました。
すべての人がこの映画を気に入るとは限らないですが、小生にとっては、この映画は美しく、力強く、親密な物語であり心に長く残るに違いない。
kuu

kuu