Jun55

aftersun/アフターサンのJun55のレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0
Rotten Tomatoesの評価が96%、映画賞も受賞しているので、期待して観たのだが、正直、鑑賞後は、どのように評価すべきか戸惑った。
ただ、鑑賞後に監督のインタビューや各種評論を観て、ようやくこの映画の評価が定まった感じ。
この映画は二回観たほうが良さそう。ストーリーが進む中で、前半部分の理解が徐々に深まる展開になっている。
(エブエブやTARでも感じたが、事前にどれだけの情報をインプットしていくのかは難しいところだが、好評な映画は、往々にして事前のインプットなしには一度見ただけでは理解できない)

この映画は、親子関係、特に大人と子供としての親子関係の微妙な関係性をうまく捉えている。
親は、子供を腫れ物を扱うように大人の世界から遠ざけようとするのだろうし、そして、”子供は大人の世界が理解できない”、という前提で接するのだろう。
一方、子供は、親が知らないところで、大人の世界に関心があり、そこに”踏み込んで”くる。誰もが通るComing of ageの世界。
その時の親の反応は分かれてくるのだろうが、それを踏まえて、この映画の父娘の関係を観ると、とても愛らしく、心を動かされる。
父は、大人の世界に入ろうと娘を歓迎する一方、自分の置かれた不幸の世界からは娘を遠ざけようとする。
戸惑いやわだかまりもあるのだが、お互いを思う気持ちには親子の強い絆がある。

主人公ソフィー(監督の実体験)の目線、記憶がベースになるように映像のカット、色合いが工夫されているところが面白い。
この映画の映像には、ソフィーの当時の記憶と、ソフィーが当時の父の年になったときに初めて認識できたこと(当時の父はこうだったのだろう)、と二つの目線が散りばめられている。その繊細な扱いは、なかなか一回観ただけでは分からないかもしれない。

この映画を観て改めて感じることは、親は良くも悪くも子供に最も影響を与える人物で、親はそのことに気が付いていない、ということ。

この映画の繊細さは、父娘を演じた二人の俳優の名演技がなくしては伝わらなかっただろうし、ある意味、鬱積したストーリーの中にも明るさが伝わるのは、80年代の音楽の使い方が巧妙だから。
Jun55

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