みかぽん

フェイブルマンズのみかぽんのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.8
幼い頃、その日観た映画でアタマがぱんぱんになり、夜、目を閉じた布団の中でその収まった映像(残像と言うべきか)を何度も何度も反復させ、眠りにつくまでその世界に浸り続けた思い出はある。しかし、凡人はきっとそこまで。なので改めて自分は与えられる側の人間なんだなぁ、と苦笑い。
しかしサミー(スピルバーグ)はその先の、それを再現して検証する方向に向かうのだから、やっぱりそっち側なんだ、と頷くことしきり。と同時に、列車のオモチャを衝突させては壊し続ける息子に閉口する父親のバートは「映像に残せば再現出来るし壊れない」と助言して8mmカメラを買い与える。勿論それは苦し紛れの対策だったかもだけど、親によっては、「息子の心の底には破壊的な思考があるかも知れない」などの不安妄想から、こうした一連の行動を否定し、映画もオモチャも取り上げた果てに、全く得意そうにないスポーツに気を向けさせる画策をし、息子の〝危機的状況の脱出〟に安堵する輩もきっといるだろう(サミーの父親がバートで本当に良かった🥲。だって、ヘタをされてたら我々はその先のスピルバーグに出会えなかったかも知れないのだから💧)

またミッツィほど芸術に造詣はなさそうな、と言うか現実的なバートが、趣味も程々に…と呆れると、すかさずミッツィが、サミーは趣味でやってるんじゃないの、と訂正に回るところなんてのはもう、彼女はずうぅーーっと昔から息子の才能を認めていたファン1号だったからだろうなぁ。
なのでこの辺りからもう、スピルバーグが若かりし頃によくプレミアに母親を同席させていた事と本作が点と線で繋がった気がした。

しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思うと 人の問うまで、 の百人一首は唐突かもですが、自分が収めた映像の中の、収まった本人さえも気づかない愁う瞳のその先を、サミーは隅々から視る編集の過程で見つけ出し、確信する衝撃と悲しみはちょっと切なく、でも、このエピソードはきっと事実なのですよね。、

本作は、自分をこの世界に辿りつかせてくれた大好きな両親、とりわけ母親に捧げられたオマージュ。そして彼自身の原点についてもを、本日は併せて共有させて頂きました😌😌。
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