ミキサー

正欲のミキサーのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

原作は読んでいないからなんとも言えないが、映画を見る限り、制作者のマイノリティーに対する偏見を感じた。制作者には「珍しい性的指向を持っている人は基本他人に興味がなくて友達付き合いもなく、疎外感と孤独を抱え鬱々として寡黙で厭世的で無気力で受動的」というようなイメージがあるのだろうか。見た人の偏見を助長させないためにも、主人公はそうだとしても他は違うとか複数のパターンを見せるべきだと思った。
例えば、同じ性的指向及び嗜好を持っていても、自分しか感じられないその感覚に誇りや優越感をもって楽しく生きている人や、その感覚を表現し他人に積極的に伝えようとする人に出会って衝撃を受ける、というような描写があってもよいのではないか。
強い孤独感を抱えると同時に仲間との繋がりを持ちたがっている、理解されたがっている、というのも偏見ではないかと思った。
もちろんそういう人もいると思うが、そうでない人もいると思う。
終盤の、自分たちと同じような人たちがいることを知ったときの「その人も一人じゃないといいね」というような台詞、今まで自分たちが散々受けてきたマジョリティーからの同調圧力を忘れたのか?自分たちと同じだと思い込まないほうがいいのでは?と疑問を感じた。
とにかくマイノリティーの描き方が画一的で、マイノリティーのステレオタイプを作りたいのか?という感じがした。
あと、水に性的な欲求を覚える感覚の描写が希薄で、リアルさや臨場感に乏しかった。見た人が納得できるような水の魅力をもっと主観的に生々しく詳細に描写してほしい。
そして、これも偏見だと言われればそれまでかもしれないが、日夜自分の欲求の対象について考え、動画を見たりして探求しているようなリビドーの強い状態(マジョリティーでいうと帰宅即アダルトコンテンツを鑑賞するような状況)と、あそこまで無気力に明日生きる気力すらもないというような状態が両立しうるのだろうか、という違和感もあった。性欲は多かれ少なかれ生への原動力ではないのだろうか。
あと稲垣演じる父親、子供に怒鳴ったり無理に学校に連れて行ったりせず、youtube配信も苦言は呈しつつも止めずに自由にさせているのに、母親が無理解を執拗に責めることに違和感を覚えた。ほっといてくれてるだけいいじゃん。