ホリ

正欲のホリのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.7
息苦しさも
多様化している現代だからこそ、
偏愛というものを
しっかり『普通』と受け止められる
ようになりたい。

そもそも、
当たり前だと思っているものに
『それって、おかしいよね?』って事が
たくさんある。

この映画では、
『普通にしなよ』『意味が分からない』
と否定されてしまうような
感情や価値観を隠しながら生きる…
複数の登場人物の視点で構成されている。

磯村さん・新垣さんが
演じる登場人物が
一般的なカップル像として
共同生活を始めるのではなくー

互いに
偏愛的な感情・価値観を理解し、
唯一素直になれる仲間として、
環境を作り上げる構成になっている。

ベッドシーンの時も
『普通の人はこんな事をやって、
興奮するの…?
そっちの方が変態じゃない』
と微笑みながら、
検証するやり取りも印象的。


映画の序盤は、
メインのキャラクター達が
普通の人達に溶け込むように
息を潜め、
そのストレスを発散するために
1人の世界に閉じこもる。

独自の趣味や
行動に逃げていく様から、
作家・実験映画的な枠組みで
ストーリー進行するのかと思いきや、
作品の分岐点で
我慢の糸が切れてしまう。

『自分がおかしいんだ』
『理解者なんていない』
という感情から、
自殺を試みる描写も。
しかし、1人だけの点の世界から、
点と点が結びつき、
世界が広がっていく映像描写や
心理描写が素晴らしかった。


『正欲』という
映画のタイトルのように…
1人で生きていく限界・
乗り越えられない瞬間が
いくつもあると思う。

それを支えてくれる誰かー
他者の存在を求める感情に
偏愛や…
普通という言葉で
当てはめる必要は
そもそもないのかもしれない。
ホリ

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