スワヒリ亭こゆう

ロスト・キング 500年越しの運命のスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

4.2
サリー・ホーキンスの新作映画を観てきました。
映画は実話を基にした作品で、シェイクスピアの戯曲になっているリチャード三世の遺体を発見した女性の話。
主人公フィリッパ・ラングレ(サリー・ホーキンス)はある日、シェイクスピア『リチャード三世』』を観劇する。あまりにも醜悪に描かれているリチャード三世に違和感を抱く。
するとフィリッパはリチャード三世の霊を見るようになる。
リチャード三世を調べる内に500年もの間、リチャード三世の墓は行方が分からなかった事を知り、その調査に乗り出すという話。

サリー・ホーキンスはひたむきな女性を演じさせたら、1番良いです。
脇役じゃなくて主人公でひたむきな女性が時には挫けそうになりながら信じる事へ突っ走っていく女性を演じさせたら凄いというのが本作を観て思いました。
強い女性像というのではなくて、か弱さを持ち合わせているけど芯がある。だから、映画が感動を生み出すんだと思いました。

歴史上の人物の人間性というのは出鱈目だと思うのは当然なんです。
歴史学者は自分が学んだ実績から答えを導いて人間性を語ろうとしますけど、今回の様に敗者の弁といのは後世には語られず勝ったものの言葉だけが残り、恨み辛みの籠った言葉だけが残りリチャード三世という歴史的人間性が生まれた。そこに真実を見出すのは難しいというのはフィリッパに共感出来ます。

イギリス映画というのは家族の描き方が上手だと思います。
フィリッパの元夫との距離感も面白かったですね。

他人の人生を不遇だと感じ、励ましながら観るのは映画の醍醐味です。ストーリー構成がベタということで終わらさず、本作のもっと深く語りたい事を感じて欲しいと思います。
人間というのは時に他人を貶す事で自分を高めようとする愚かな生き物。
それで終わりにせずに他人の為に反論して戦う女性はカッコ良かったです。