山好き春のパン祭り

METライブビューイング2022-23 テレンス・ブランチャード「チャンピオン」の山好き春のパン祭りのレビュー・感想・評価

4.0
METの新作には毎回驚かされる
本作はjazz in operaとしてスウィングな音にオペラの歌唱が乗る、というより歌手勢の実力が凄すぎて旋律を乗りこなしているみたいな体感だった、テレンス氏に脱帽
題材が2013年に亡くなられたボクサーのエミール・グリフィス氏の生涯
クローゼットバイセクシャルとしての苦悩、ネグレクトから這い上がりボクサーとして成功するさなかに試合の事故で相手の命を奪ってしまった贖罪、パンチドランカーそして認知症
青年期を演じたライアン・スピード・グリーン氏はセミラーミデの高僧オーロエ役でなんとなく覚えていたけどタイトルロール大抜擢でそれに応える素晴らしい歌唱・演技・その時期からは想像できないくらいの身体の仕上げっぷりも話題に
対戦相手のエリック・グリーン氏も見事なキレキレ具合の仕上げ
作品の重厚さを増すエリック・オーウェン氏、抽象化されてるがリアルな認知症演技は介護経験者的に観てて苦しくなる程
キッズエミール役のこ、あと10年したらとんでもない化け方して出てくるわ絶対、いまから楽しみ
白眉だったのがエミール母役のラタニア・ムーア氏、支配的な母親なうえに子供を置いて出て行き、さらに再会してかは金にがめつくて色々すごいのにそうならざるおえない理由がヴァージン諸島の女にはあった悲哀を見事に歌い上げていた、個人的にMVP
プライド月間にみれてよかった、LGBTQを題材にしてエンタメとして消費するだけではなく現在の在り方になる以前がこうだったと近代史的な歌詞が印象的
事前の評判でBLM映画ともきいていたけど、そこは強調ではなく自然体で在ったことがMETオペラの懐の広さだなとも思った
また観たい