ブルームーン男爵

METライブビューイング2022-23 モーツァルト「魔笛」のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

4.5
モーツァルトのオペラでも最も人気の高い作品の1つ「魔笛」のMETライブビューイング(NYのメトロポリタン歌劇場の上演オペラを映画館で上映する取り組み)を鑑賞してきた。モーツァルトはほんと天才だと思う。MTGのオペラのライブビューイングは今シーズンはこれが最後だが、次シーズンも楽しみだ。

さて、「魔笛」は、イタリア語の上流階級向けオペラではなく、ドイツ語の大衆的なオペラで、とにかく親しみやすい楽曲が多い。レチタティーボ(叙唱。語るように歌われる部分。)ではなく、歌と歌の間は台詞でつながれる。

ただ一方で、意外とストーリーはゴチャゴチャしてるように思う。オペラブッファ的な要素と、オペラセリア的な要素が絡まっており、また、エジプトのイシスとオシリスという神や、それを祀る神官のザラストロなどが登場して、オリエンタルな要素が含まれていたり、フリーメーソン(ネットで言われるような秘密結社ではなくただの友愛団体)の教義なども反映されており、相当に教養が深くないと作品の神髄は理解できないだろう(私は理解できない)。なかなかモチーフが多彩である。ただ本作が世界的にも大人気なのは表層的なところだけさらってもかなり楽しめる作品となっているからだ。

今回の上演では、新演出ということで、裏方のオーケストラやら音響係もオペラに参加し、なんと出演陣も観客席に出て行ったりする。服装は現代的で作業着だったり迷彩柄だったりスーツ姿だったり、18世紀には存在しない銃が出てきたりする。欧州のオペラなので演者は白人が基本だが、主人公のタミーノ王子が恰幅が良い黒人のローレンス・ブラウンリー。ただ意外とマジカルな世界なのでこれはあり。舞台の幕に映像を投影したりと創意工夫が斬新で興味深く観れた。

次シーズンも様々なオペラを鑑賞したいと思う。