『僕らは過去にしか学べない、未来を託すその重みを』
犯罪係数によって人々が管理された社会で法律の廃止が議論されるＳＦテレビアニメの劇場版は、前日譚として一つひとつパズルのピースを埋めていく快感がもたらす連続絶頂の先に、プロセスの重要性を痛感し余韻の楔を心に打ち込まれるオールタイムベスト級の傑作。
勝手に命名したジャンル的には「最終回のストーリーが最初から決まっているもの」に該当して、女の顔どころではなく少女に見える常守朱に僕のドミネーターが反応しなくもなるが、彼女を作中最強のシステムと断言して議論することを避けてきた自分を今省みている。
この空前絶後のカタルシスを味わうためにはＳＳ含めたシリーズ全作品の予習がマストであるが、相も変わらず一本の映画として何たらと作劇の可能性を狭める勢力の台頭が予想され、本当に面白いものが勝利して支配するシステムの円熟を願うばかりではまだ足りない。
鑑賞記録
2023.05.12
横浜ブルク13シアター1
→この十年で最も重要なシリーズのひとつである本作の集大成に相応しい上映。今のトレンドとは別ベクトルのリアリティを希求する映像に、歴史を彩ってきた劇伴のアレンジが沁み渡るサウンドデザイン。選ばれし観客の集中力も素晴らしく合わせて完全無欠足りうる。
2023.06.09
Ｔ・ジョイ横浜1
→久々に新作が弱い今週末にぴったりハマってしまった裏プレミア上映。先週の「怪物」が描いた相対的な正義も素晴らしかったが、この絶対的な真実を見せられると満点は付けられないと感じてしまう。音量を絞ることで示された完全無欠から唯一逸脱する慟哭。
