ドント

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!のドントのレビュー・感想・評価

4.1
 2023年。幸福になった。しあわせな映画である。科学者の作った液体に触りミュータントとなったカメ4匹、同じくミュータントのネズミ・スプリンター先生に育てられ大きくなって今や15歳くらいとなった4人がヤンヤヤンヤと騒ぎながら巨悪に迫るアメコミムービー。
『アクロス・ザ・スパイダーバース』と本作が映画館で観れる今年って、なんというかマジ最高なのではなかろうか。どちらもアニメ描写の新時代のでっかい扉を開けている。スパイダーマンはコミック絵が奔放に手数の多いアニメをやりながら実写映画的表現にも果敢に挑戦している。一方こちらは同じくアメコミの、しかしザッとした作画と、クレイアニメのような質感が融合して、ほんでもって全体にワチャワチャしている。スマホも持ってるし「手裏剣投げてみた!」的なクソバカな動画も撮るし口は軽いし腰も軽い。十代はバカなのである。
 バカをやりながらも、先生からは「人間界も人間も危険だ!」と教えられ、地下の家からはこっそりとしか出入りできない。普通の人間の子の生活が送りたいな……高校とかに行ってモテてぇな……でもカメだとキモがられるよな……などと悩んでいる。言うまでもなくこれは思春期の子供の悩みとの重ね焼きである。そんな彼らが世間を知り友達を作る。そしてワルっぽい大人ミュータントと出会うわけで、これアレですわ、不良に憧れる高校生が半グレに出会う、みたいな図式よ。仲良くボウリングとかしちゃうし。
 ここからの話の転がし方は、王道を恐れずにひた走りつつチョビっと変化球となっていて、この展開がとても優しいと思った。人(ミュータント)の悪い部分、暗い部分を隠すことなく、しかし善性を信じて作られている。いやぁ嫌なヤツ悪いヤツもいるけど、世の中捨てたもんじゃないぜ、みたいな。ティーン、もしくはオタクな感じを卑下もせずアゲもせず、善というものを下支えにして明るく軽妙に描いていて、すごく風通しがよい。なのでとても幸福になった。かつて十代だった人にもこれから十代になる人にも観てほしいと思った。ありがとう、いい映画です。
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