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ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

3.8

大阪アジアン映画祭で好評を博し、ネット上でも絶賛評を目にしていた『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が配信開始されたのでさっそく鑑賞。

この映画の舞台は、ある大学(というか関西人なら分かると思うけど立命館だった)のぬいぐるみサークルという名ではあるが、ぬいぐるみを作って愛でるだけでない。本当の目的は、ぬいぐるみに話しかけ、他人には打ち明けられない悩みを吐露するという事。
なぜ生身の人に打ち明けないかというと、聞かされた人を傷付けてしまうからだ。
ごくごく繊細な、瑞々しく壊れやすい感覚を掬い取った作品。
またフレッシュで新感覚な映画だとも感じ、それはこのサークルの西村(若杉凩)が体現する、旧態依然としたジェンダー的束縛から解き放たれたような佇まいや、西村と西村のガールフレンドを当たり前の受け入れるサークルメンバーの振る舞いからくるものだろう。
同時に、英語でnervousと言う時のネガティブな方の感覚も感じてしまった。

生身の人間だからこそ、相手にダメージを与える可能性があるのは承知で、それでも自分の思いを話し、相手のリアクションを感じてはじめて、所謂〈辛い時も人に話すと少し楽になる〉という効果があるのではないだろうか。そんな事を思う自分は古いタイプの人間なのかもしれないが。


ただ「ぬいぐるみにはしゃべりかけない」側の人の台詞で締めるラストは、客観性を持ちえたクールで秀逸なものでハッとさせられた。
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