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Pearl パールのkanacoのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.8
『X』で一際に強烈な個性を放つシリアルキラーは如何に誕生したのかを描く前日譚。前作とテイストは変わりレトロアメリカ感とホラーテイストが織り成す夢見る女子の“逆”サクセスストーリーという感じ🤔狂気を内包しながら歪に突き進む若きパールちゃんの魅力が満載!これが噂のミア・ゴスさん祭り😀✨(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

◆あらすじ◆
1918年テキサス。若い娘パールは映画やショー・スターになることを夢見ている。しかし現実には、若くして結婚した夫のハワードが第一次世界大戦に出征したため田舎の実家に取り残されており、厳しい母親と病気の父親と共に人里離れた農場で暮らしていた。母親から父親の介護と家畜の世話を押し付けられ鬱屈した抑圧的な毎日を過ごすパール。ミュージカルショーの真似事を見てくれるのは農場の家畜たちだけ…。そんなある日、町で地方を巡回するショーのオーディションがあることを聞きつけたパールは参加したいと強く望む。しかし母親は許さず…。

❶『X』の中で一際に強烈な個性を放つシリアルキラーは如何に誕生したのかを描く前日譚

テキサスに映画撮影へのために訪れた3組のカップルが、そこに住む怪しい老夫婦に襲われるというスラッシャーホラー『X』。そのキラーの1人である怪老婆パールの前日譚にあたる作品です。遡ること60年前。若い娘パールがいかにして『X』の中でも一際に強烈な個性を放つシリアルキラーとなったのか…を描いていきます。

舞台は『X』にも登場したテキサスにある人里離れた農場。そこに暮らしている若い娘パールは映画やショーのスターを夢見る無邪気な少女でした。外への憧れが強いのですが現実には、若くして結婚した夫のハワードが第一次世界大戦に出征したため実家に取り残されており、厳しい母親と病気の父親と共に人里離れた農場で暮らしています。家畜と父親の世話に追われる毎日であり、母親はパールが夢を追いかけることについて完全なる否定を押つけ続ける人でした。本人が自覚するほどに残酷な気性を持つパールは、ある日『X』を彷彿とさせるキラーとしての才を覚醒しますが、果たしてその契機はなんだったのか…という秘密を探ります。

❷レトロアメリカ感とホラーテイストが織り成す夢見る女子の“逆”サクセスストーリー

『X』はスラッシャーホラー映画の王道をベースにしているような印象を受けましたが、『Pearl』はジャンルが違います。あくまで主人公のパールの視点で物語が進んで行きますし、キラーの誕生譚であるためホラーではありますが、夢見る女子の“逆”サクセスストーリーといった感じ。ショー・スターを夢想するミュージカルやメロドラマっぽさも感じます。オープニングのレトロアメリカっぽいフォントから早々に印象付けられるように、美術や衣装にも〈時代感〉がありますし、おぞましいグロテスクな映像と夢見る少女のアメリカンファンシーな映像がミスマッチに混ざり合って、特色のある不気味な雰囲気になっていると思いました。

閉鎖的かつ抑圧的な雁字搦めの家族関係、あらゆる環境要素により自分が望んだ人生を歩めず狂っていく女たち、〈私は特別=Xファクター〉という希望的観測と〈思い通りにならないのが人生、それを知っていれば幸せになれる〉という残酷な現実、自分のうちにある激しい感情を押し殺していた者から解放される残虐性…。

熾烈を極める女たちは壮絶ですが一方で父親やハワードなどの男性陣に「ねぇ、今どんな気持ち?🙄」って聞きたくなるような作品でもありました。父親とハワード、本作では情報だけ並べられるも心情は深堀されないので気になります🤔

『X』で演出あったものについて、本作により謎が解けたりパールへの理解度が深まったりと前日譚として楽しい仕様になっていたと思います。パールとワニさんがこんなに仲良しだったとは🐊一番の親友じゃん😂前日譚なので本作から見ても問題はなさそうに感じましが、その順で見ると『X』の方のストーリーインパクトが薄れちゃうかもなぁ~とは思いました🤔

❸パールちゃんの魅力が満載!これが噂のミア・ゴスさん祭り😀✨

下方に2つ髪を結び(本当は輪にして止めているのですが)、パッチリお目めであどけない表情、サロペットを着て農家を闊歩している姿を見ながら「邪悪なペコちゃんみたい…🤔✨」と思いながら鑑賞していたのですが、そんな可愛らしいビジュアルの中に明確な狂気をにじませるミア・ゴスさんのホラーヒロインぶりが素敵でした。

『X』はスラッシャーホラーにつきカメラが追うキャラクターは分散しますが、本作はパール自身をたっぷりと堪能できます。一見普通に会話できるように見えて突飛で奇抜な行動を起こす彼女の〈ヤバさ〉を醸し出します。ラストの独白の長回しに惹きこまれましたが、エンディングのパールがさらにインパクトがあって衝撃でした。「恐怖」と「滑稽さ」と「憐れみ」が同時に浮かぶような〈覚醒して完成されたパール〉に目を奪われます。

「環境が殺人鬼を生んでしまった」というよくある悲劇を描くのではなく、環境は一因であり本人すら疑問に感じていた生来から持っている〈サイコパス〉の気質を彼女の内に両立させています。〈理由あって殺人している〉というより〈常に怒り狂っている〉印象。ストーリーでパールに感情移入ができるのと同時に、やはりこの女は〈違う〉のだという突き放したくなる…そんな複雑な感情を抱かせるキャラクター付けになっていると思いました😆✨

🐷🐝「『X』『Pearl』、そして現在製作中の『MaXXXine』で三部構成らしいですが、ラストの作品も楽しみですね。パールと同じく、現代で自分を「私は特別=Xファクター」と激しく信じるマキシーンがどうなってしまうのか気になるところ🤗

それにしても…ウジ虫ってなんであんなポトポト落ちるの…(;△;)」
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