しゅん

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのしゅんのレビュー・感想・評価

4.2
【正義の先にあるもの】

未だに数多く存在する性犯罪。
真実を追い求め、強大な敵と戦った記者と勇気ある行動をした被害者たちの実話を基にした物語。

〝実話を基にした〟というより、ドキュメンタリー映画のような作品。
奇しくもジャニーズの性加害が話題な中、鑑賞したことで日本でも他人事ではないと痛感した。

映画界隈で神の存在、ハーヴェイ・ワインスタイン。
『パルプ・フィクション』
『グッド・ウィル・ハンティング』
『恋に落ちたシェイクスピア』
『ギャング。オブ・ニューヨーク』
『シカゴ』
『キル・ビル』
『ロード・オブ・ザ・リング』
など、数々の名作のプロデュースをした逸材。
お恥ずかしながら、そんな人が何十年にもわたり、性的暴行事件を繰り返していたのを今作で知った。

女性記者たちが0ベースから記事掲載するまでの苦悩と恐怖と葛藤を詳細に描いていた。
被害者の女性たちが記者に真実を話すシーンは何度も胸を打つ。内容も然る事乍ら、思い出してしまう辛さや口にすることへの恐怖など、想像を絶する経験だろう。
そんな中で実名を出す行動は、自分ではなく『未来の誰か』のために、結果が良い方向に向かうか分からない中、想いを記者たちに託す女性たちの真の強さだと感じた。
その強さが強大な悪を打ち滅ぼし、社会全体の意識を変えた。
ただ被害者たちの心が癒えることはない。
失った人生を取り戻すことはできない。
この映画では、そこは描かれない。
解決は大きな前進だが、ゴールではないことを知らないといけない。

『七つの会議』のラストシーンで野村萬斎が〝悪はなくならない〟と言っていたが、今作のような悪が一つでも明るみになり、未然に防げるような仕組みが社会全体で必要だと感じた。
しゅん

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