力作。
『パルプ・フィクション』ほか、ハーヴェイ・ワインスタインが手掛けた作品に影響を受けてきた映画ファンこそ、ちゃんとこの映画を観て、しっかり受け止めないといけない。
セクハラ製作者が業界を牛耳っていたという負の歴史を、映画界として風化させてはいけないという決意を感じさせる力作だったと思います。
主演のキャリー・マリガン、衝撃作だった『プロミシング・ヤング・ウーマン』に続いて男尊女卑と戦う内容の作品に連続で出たことになり、出演作品を選ぶうえでの意識の高さを感じました。
冒頭、キャリー演じる女性記者は、妊娠中ながらもトランプのセクハラ疑惑を追っていて、その後産休が明けてから、ワインスタインを追うチームに加入する。
セクハラ疑惑を過去にも追及してきた実績と、子供を産んだばかりの母としての奮闘を序盤から見せることで、広い意味で「戦う女性の話」になっていて、そこがすごく良かった。
ゾーイ・カザン演じるもうひとりの女性記者の方も、同じくワーキングマザーです。
子育てをしながら、取材にも精を出し、声を上げられない名も無き女性たちのために全力を尽くす記者2人の姿には、本当に感服しました。
ニューヨークタイムズの社内は、もちろん育児と仕事の両立に理解がある風に見える。それでも重要取材となれば、上司が「いますぐ飛行機に乗って」と言うのだから、このギアの切り替えが本当凄いなって(^^;
MeToo運動に関連した作品を、しっかりと働く女性の物語としても深めた点に、大きな意義があると思いました。
あと、この映画に携わった有名人の執念。その強さ!
その代表は、やはりアシュレイ・ジャッドで、彼女は本人役として出演して、記事が世に出るにあたってのシーンでは、非常に印象的な表情を見せていました。
古傷を抉るような辛い役だと思うのですが、それを自分自身で演じることに、この件に関しての執念を感じざるを得ません。
加えて、この件に関して知名度の高さが際立つのは劇中でも名前が何度も登場するグウィネス・パルトロウですが、彼女は出演していないながら、元恋人のブラッド・ピットがこの映画を製作しているところに縁を感じてしまいます。
ブラッド・ピットはグウィネスと付き合っていた頃、彼女からセクハラの話を聞き、ワインスタイン本人に詰め寄って強気に警告したという話を、本人も認めています。
映画製作という形で、過去から問題になっていた愚行に引き続き抗議をしていることになり、勇ましさを感じますね。