りょう

ファルコン・レイクのりょうのレビュー・感想・評価

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
3.4
 16mmフィルムの質感とカナダの湖畔の風景がとても心地いいです。フィルム撮影の映画を当たりまえに観てきた年代からすると、すべては無理までも、映画というフォーマットにふさわしい映像を追求するクリエイターが増えてほしいです。
 物語は、ありがちな少年の“ひと夏の経験”というものでしたが、この年代の3歳年上の女性って、ほとんど子どもと大人くらいの感覚です。バスティアンの背伸びした言動は、それなりにクロエの心情に影響していた雰囲気で、クロエも意図的に彼のことを弄ぶようなこともなく、ごく自然な言動が彼のナーバスな気持ちを揺さぶっていただけのような印象です。
 それを想うと、地元の少年たちの悪ぶった態度が作品の隅々に蔓延している印象で、あまり好きになれない部分でした。意図的な設定でしょうが、バスティアンとクロエの交流を巧みに邪魔しているような…。
 ところどころドキュメンタリータッチなのは、少年少女たちのナチュラルな仕草を撮影したテイクを編集したからでしょうか。もう少しフィクションっぽい演出がほしかったです。というのは、エンディングの少し余白のある描写が素晴らしいのに、それが本編のパートと異質な仕上がりで、衝撃の結末という展開とも相まって、少し浮いてしまったからです。
 日本の夏休みは、あくまで子どもや学生たちのものになっています。大人たちには欧米のようなバカンスが存在しないので、家族で避暑地に滞在するようなことができません。やっぱり子どもの成長や人間関係の形成にも影響しているはずです。お盆休みの1週間ばかりを超混雑するなかで一斉に帰省して、疲れきったまま仕事に復帰するような社会のシステムが組織の生産性を低下させていることに気付くべきです。
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