えびちゃん

丹下左膳餘話 百萬兩の壺のえびちゃんのレビュー・感想・評価

丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)
5.0
おもしろすぎる。2022年劇場事始にふさわしいド傑作エンタメであった。全ての語彙を失って超イイ…しか言えなかった。
百万両の価値がある壷をめぐる活劇。お金をめぐって下世話な感じになっていくかと思ったがそれは私の心がばっちいからで、やさしい時間が流れ、大団円な人情味溢れる清々しいものであった。用心棒でヒモの丹下左膳とお藤のやり取りが息ぴったり。預かることとなったヤス坊が健気でかわいい…おばちゃんちで一緒におもち食べようか。ちゃんと寺子屋に通わせてあげるお藤の心意気も素敵。
ぽこぽこした音楽が良い!しかし殺陣シーンだけは無音となる。ほっこりあたたかな空気が流れていたなかで一気に緊張感が漲り、目を、心を奪われる。素晴らしすぎる。
先日あげた『とらんぷ譚』の前年1935年の作品。山中監督も映画の神だった。
友人に勧められるがまま観たので前情報が一切なかったのだが、山中貞雄監督は現存する作品が3作しか残っていないのですってね。無教養なので丹下左膳なる人物も初めて知りました。この後観た河内山宗俊も。彼らをモチーフにした作品がたくさんあったり恐らく舞台なんかもあったでしょう。この時代を生きた人たちにとって丹下左膳も河内山宗俊も最高の娯楽だったということがわかる。100年近く経っても彼らと同じように笑い合うことができる、楽しむことができるというのは本来あるべき映画のかたちなのかもしれない。
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