ドント

連邦議会襲撃事件 緊迫の4時間のドントのレビュー・感想・評価

3.6
 2021年。大統領選に敗北した現職、ドナルド・トランプは「不正選挙が行われた」「これは無効だ」と主張。連邦議会が結果を認定するその日に集会を開き、「我々は負けていない」「共に議事堂に歩いて向かおう」「我々は戦う」などと演説する。熱狂的な支持者たちは言葉通りに議事堂への道を歩き、バリケードを破壊し越え、ついには議事堂内部へと乱入する──
 実に200年ぶりという「米国議事堂への攻撃と占拠」がいかに発生し、いかに展開し、いかに終わったかをいささか駆け足の「つまみ食い」ながらも見せつける90分弱のドキュメンタリー。この前にウェブの怪ムーブメントとその背景を追った『Qアノンの正体』(同じくU-NEXT、全6回)を観ており、その最終回、ネットの怪文書が肥大化しついには現実に影響を与える極限の悪夢としてこの事件が置かれていたので、こっちも観たわけである。セットで観るとただもう、「うわぁ、えぇ……?」っとなるばかり。
 日本で言うなら国会議事堂と皇居にデモ隊が乱入、くらいの大変な出来事であるが、偉いもんで使うのは、当時あの現場にいた人たち(デモ/襲撃参加者、危険に晒された議員や職員、警官や警備隊)への受け答えと、現場の映像だけ。識者が出てきて余計な口とか挟まないし、ナレーションもない。禁欲的でドライであり、だからこそ混乱、騒乱のただ中にいた人々の言葉や映像の断片が引き立ってくる。骨が太い。参加者たちはカメラを前で屈託なく「テンション上がったね」とか「アメリカの精神、正義だよ」とか言う。神経も太い。
 議事堂のバルコニーや階段からのとんでもない人波、猛烈な熱気と怒り、怒声と罵声、ギッチギチの押し合いへし合いぶりは画面越しでも怖い。その先端が窓を破ってゾロゾロ入ってきて「副大統領はどこだ」「吊るしてやる」とか叫ぶわけである。単純に超怖い。で、守る側の警官隊の連携はうまくいっていない。そもそも人員が素人目にも少なすぎである。そして対応にもワタワタしていて、初動時の現場の人々がマジ可哀想。まぁまさか大統領が直々に「議事堂へ向かおう!」と言い出すわけが、って話ですが……。
 こんな無茶苦茶が発生しているにも関わらず、言い方は変だけれど当日の死者が5名で済んだことが奇跡のように思える。けどこれギリギリだったわけで。警備側がもっとキツく出たり、暴徒側がもっとキレてたり、議員たちが逃げ遅れていたら……と、考えると恐ろしい。占拠は4~5時間に及んだというので、先にも書いたが90分ではとても足りない。スタイルはこのままに、全4回くらいで観たかった。
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