ちろる

東京の宿のちろるのレビュー・感想・評価

東京の宿(1935年製作の映画)
3.7
まさしく「自転車泥棒」を思い起こさずにはいられないネオリアリズム作品。
行き場のない切なさが観た後も心に残ってしまい、随分と落ち込んでしまった。
少年たちの母親は一体どこへいってしまったのだろうか。
なぜ彼らを捨てたのだろうか。
犬を売れば飯の種になるほどの「貧しさ」が蔓延したこの時代、家族の温もりがあればきっと少しは何かが違っただろうに、職もなかなか見つからずに放浪の旅をする父親1人には息子2人を養うのは困難すぎる。
追い詰められる父親。君ちゃんのお母ちゃんの母性と、妹の様に可愛らしい君ちゃんに無邪気な笑顔を見せる息子たちを思い、父はきっとほんのひと時の幸せを感じたのだろう。
お父ちゃんは君ちゃんのお母ちゃんに恋に似た感情を抱いていたのだろうか?
なぜ、息子たちに父が一番必要だという事を気がつけなかったのだろうか?
男の弱さが一気にあふれてどうしようもなくなったラスト。
小津作品の中では最も遣る瀬無さの漂う救いのない展開にこの時代の暗闇の深さを感じずにはいられない。
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