みゅうちょび

帰れない山のみゅうちょびのレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
3.9
必ず見る!と心に決めてからやっとこさ鑑賞。

ちょっと尺が長い…

けど、最近は男性2人となると大体LGBTQ系なので、逆にとても新鮮だった。監督は「ビューティフルボーイ」「オーバーザブルースカイ」とどちらも大好きな難しい名前の人…フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン。言えたかな…

子供時代から、青年期にかけての主人公ピエトロが親友ブルーノとの交友を振り返る。

振り返るといっても、語りが青年期のピエトロによるもので、映像で2人の出会いからを描き出していく。

とにかく山の景色が見事で美しいし、このジャケイメージの様に映像の構図が素晴らしいです!!ひとつひとつのシーンに魅せられます!

音楽も後半につれ様子が変わっていくけれど、挿入されるフォークのなのか重めのカントリーソングのような曲がなんとも言えなくいい味付けだった。この監督はどの作品も音楽がいいです♪!

原題にある英訳はThe Eight Mountainsで8つの山。これは、主人公がネパールを旅してそこに新たな生活を見出す中で、誰からか教えられたヒンドゥー教の思想のひとつらしく、8つの海峡に8つの山、そして中心には最高峰のメルー山があると言うもの。これはどうやら人の人生の山あり谷ありてきなことらしい。

ピエトロは都会育ちで父は大きな工場で働く裕福な家柄。一方ブルーノは、山で牛追いをしている叔父と叔母の元で暮らし、2人が親友になったことでピエトロの両親がブルーノに都会の学校に通わせようとしても叔父の反対でブルーノは山にとどまるしかなかった。

大学に通う様な年頃になると疎遠になり、2人は違う道を歩む。

そして、あることをきっかけに再会する2人。

分かり合えなかった父とブルーノとの交流に戸惑い、時間をかけてそれを理解するピエトロ。

ピエトロの父の想いを胸に、ピエトロを父へと導こうとするブルーノ。

そうして2人はそれぞれが時を分けて、人生の最も充実した時を迎えるけれど、帰れない山があるのだと気づく時が来る。

なんとも切ないラストだけれど、そこには悲壮感はなく、成就と言う言葉が浮かぶ。

豊かな人生に必要なもの。

己の望むものを知り、知識を増やし、互いの成長を見守る友がいて、出来れば旅をして世界を見て己の小ささを知る。

そのタイミングは違えど、それらがあればきっと豊かに暮らすことができる。

実に深みのある作品だった。
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