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あちらにいる鬼のHiiiのレビュー・感想・評価

あちらにいる鬼(2022年製作の映画)
3.6
私が見ていたのは既に僧侶になり講演などで忙しくしている瀬戸内寂聴の姿だった。
99歳まで生き情熱的かつ波乱の生涯を送った、作家であり僧侶の瀬戸内寂聴が出家を決意させたのが、同業者で妻子ある井上光晴との道ならぬ恋がきっかけになっていたとは。映画の中では"白木光晴"となっているが実際には井上光晴という作家とその妻ショウコ、"長内みはる"改め瀬戸内寂聴の三角関係の物語。2人の女性の視点から関係性と心模様を描いている。

世の中的には受け入れられない話かも知れないが、そこにこそどうすることもできない感情や其々の超越した精神力やなんかが渦巻いていて文学的で興味深い。

見終わったあと知ったが、この作品は瀬戸内寂聴が書いた自叙伝ではなく、なんと井上夫妻の長女で直木賞作家の井上荒野が書いたものという事に驚いた。編集者から両親と寂聴さんの関係を書いてみませんかと提案があって書いたみたいだけど、どんな気持ちで書いたのだろうか…映画の中で広末涼子演じる井上の妻のショウコの様に全て知った上でどんと構えて綴ったのかなと思うと修羅場で余裕で緑茶を飲む様な母親譲りの精神的な強さを感じる。実際に井上夫人は瀬戸内寂聴に作品の感想など手紙を送っていたらしい。

長内みはる(瀬戸内寂聴)役を寺島しのぶってのは何となく分かるんだけど、冒頭の高良健吾とのベッドシーンはしっくりこなくて気持ち悪かったな…。
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