ゆめちん

聖地には蜘蛛が巣を張るのゆめちんのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.0
聖地には蜘蛛が巣を張る
 
激しく心を掻き乱される一本でした。
 
イランの聖地マシュハドで娼婦連続殺人事件が発生する。人々は恐怖を抱く一方で、犯人を英雄視するものもいる中、女性ジャーナリストのラヒミは臆することなく事件を追い始める。
 
実際にマシュハドで起きた娼婦連続殺人事件に着想を得た本作。事件を調査する女性ジャーナリストであるラヒミの視点と、街に立つ娼婦を殺害し続ける犯人の視点が交互に描かれ、 犯人逮捕までのスリリングな展開に引き込まれるが、逮捕後の展開も衝撃的。
 
16人もの命を奪っておきながら "街を浄化している" と、全く悪びれることなく言い切る犯人に驚愕する。犯人の狂気の根源は、男性優位の女性蔑視社会にあるのは明らかで、歪んだ正義を礼賛する社会構造こそが諸悪の根源であると痛感しつつ、これが2000年代の史実ということ自体背筋が凍る思いがする。
 
ラヒミ役のザーラ・アミール・エブラヒミはイラン出身の女優で、演じる中で色々と思うところがあったはず。そんな彼女の鬼気迫る演技は見応えあり。
 
ああいった形で歪んだ思想が継承されていくのかというラスト。ある意味このシーンが本作で最も恐ろしかった。
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