TOTO

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのTOTOのレビュー・感想・評価

3.0
『メインビジュアルのこの椅子、なんだと思います?』

デヴィッド・クローネンバーグとヴィゴ・モーテンセンは相思相愛なんだと思います。
両者が初めて組んだ2005年『ヒストリー・オブ・バイオレンス』では、後の『イコライザー』に影響を与えたであろう完全無欠の暴力描写が冴えわたりました。
ただ、主人公夫婦が高校時代のチアリーダーのユニフォームを着てコスプレプレイに及ぶくだりは必要ない気もしましたが、ひとまず見なかったことにしとこうと。

2007年には『ヒストリー~』の後継的スタンスの『イースタンプロミス』で再びタッグ。
『イースタン~』はちょっと脚本が弱いし、前作ほどのカタルシスは感じられませんでしたが、それでもヴィゴ・モーテンセンの魅力は遺憾なく発揮されています。
ただ、サウナで全裸の男二人が殺し合いをするシーンはやや長過ぎるし、ボカシも多過ぎ(ってことは海外ではずっとブランブラン)。でもそれもひとまず水に流しました。

とにかくこの二人が組めば最高級のバイオレンス・アクション・エンターテイメントが楽しめる、そう信じていたのです。
しかし15年の月日が流れ、両者が三度タッグを組んだこの『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』で我々は混乱に陥ります。
タイトルは『ヒストリー・オブ・バイオレンス』と対になるような座りの良さ。

もちろんこちらはタイトル通り、未来の話です。
その未来はどうやら長年、デヴィッド・クローネンバーグが頭の中で温めて、妄想して来た変てこな未来です。

役者はみんな真剣に演じているし、美術デザイナーは監督の妄想を具現化すべく見事なビジュアルを創造しています。
だから予告編を見たときは、ものすごく刺激的で前衛的でサディズムに溢れていて、かつてない画期的な、映画の未来を切り拓くような物語なのだろうと勝手に期待しました。

しかし蓋を開けたら、なんじゃらほいの世界。

設定がまともじゃないし、脚本もトンマの間抜けだし、何から何まで意味不明。
なんでもアートで片付けりゃいいってもんじゃない。
アートを逃げ道にしちゃダメよ。

関係者は誰も冷静に問い質せなかったのかな?
各々、目を合わせて首を傾げはしたんだろうけど、でも誰も監督に面と向かって言えなかったのかな?

「監督、この映画、変です――」って。

だっふんだの志村けんもいないしね。

PS:メインビジュアルの椅子のとんまな使い道については各自、映画でご確認ください。まじでとんまです。
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