健一

トリとロキタの健一のレビュー・感想・評価

トリとロキタ(2022年製作の映画)
3.0
カンヌ国際映画祭にて。

'99年「ロゼッタ」パルムドール、女優賞。
'02年「息子のまなざし」男優賞。
'05年「ある子供」パルムドール。
'08年「ロルナの祈り」脚本賞。
'11年「少年と自転車」グランプリ、審査員特別賞。
'19年「その手に触れるまで」監督賞。
そして本作。
'22「トリとロキタ」カンヌ映画祭75周年記念賞。
と・・・

こんなスゴイ人(達)。過去にいました?
まさに『キング・オブ・カンヌ』!
(個人的には監督作の中で一番好きな「サンドラの週末」が無冠なのが納得いかないが・・・)

ゴダール、ベルトルッチ亡き今。
アキ・カウリスマキが引退してしまった今。
コーエン兄弟が二人で監督するのをやめてしまった今。
私のミニシアター魂に火を灯し続けてくれる数少ない監督のひとり(いや、ふたり😅)だ‼️🔥
ジャン=ピエールとリュックのダルデンヌ兄弟監督の最新作。
期待するなというのが無理な話。


『現実は映画のようにはいかない』を映画にした作品。
相変わらずのダルデンヌ節。
辛い現実、辛い人生、辛い暮らし。

アフリカからベルギーに辿り着いた10代後半の少女ロキタ と しっかり者の少年トリ。
姉弟 と偽り 日々を過ごす。
ビザが無く正規の仕事に就けないロキタはドラッグの運び屋として生計を立てていたが 偽造ビザ を手に入れようと高額な収入のため 闇組織の仕事を始める・・・

弟を愛する姉。 姉を愛する弟。
『偽りの姉弟』なのに その愛は本物。
法を犯す行為の連続とはいえ この二人が愛おしくてたまらない。
二人で幸せに暮らしたいだけなのに 現実はそれを許さない。
冷たい運び屋のボス、金をたかる大人たち。闇組織のハードな仕事環境。
トリとロキタが少額の金額を稼げば稼ぐほど現実は辛くなっていく・・・
それは すなわち『罪を重ねている』ということなのか・・・
こんな幼い二人にも法を犯せば『神』は容赦しないということなのか・・・
あゝ ツライ。😞

『弟と毎日 電話で話をさせて。』
『お姉ちゃんは居なくなったら僕はどうすれば?』

ロキタはトリのため身を粉にして働く。
トリはロキタのため 必死に会いに行く。

終始、無音の中。まるでドキュメンタリーを見ているかのような緊張感 と 緊迫感。
過去のダルデンヌ作品では『ひとりの主人公をひたすらカメラが追う』手法だったが今回は『ふたり』。
彼等の偽りから始まった本物の『姉弟愛』から目が離せない。

ラストの衝撃にはかなりショックを受けたが、これが『現実』なのだろう。
綺麗ごとじゃ終わらない。
『現実は映画のようにはいかない!』
と。
この映画は私に突きつけてくる。

『映画』なのに・・・・・

でもこれがダルデンヌ作品。ダルデンヌ節。
新作が発表されるたびに見ずにはいられない。
ある意味『ドラッグ』のような作品。


2023年 4月6日 13:00〜
シネクイントscreen 1
💺162席
客入り 私を含め14人。 😅

渋谷にあるミニシアター。
なんとたった1日1回の上映。
なのにめちゃくちゃガラガラだった。😰
昔は渋谷でダルデンヌ作品を観るといつも満席だったのに・・・
健一

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