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CLOSE/クロースのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
3.4
これも現実。

誰かのなんともない一言が、一人の人生を終わらせ、その周りの人生を狂わせる。

その意味は伝わってきた。つらい。
その傷の深さは比較できないんだろうけど、被害者でも加害者でも経験したことがあるから、その傷をだいぶ治ってるはずなのに、表面からぐーーっと押すと結構痛い。なんかずっと痛い。痛くないはずなのに違和感が残る。
そんな感覚はわかる。

けど、なんかごめんなさい。
それより前に進まなかった。

このこは、最後振り返って、また花が咲いて、どうなりたいの。想像はできるんだけど、未来が見えなかった。
どうせその花もまた、一番いい時期に摘まれるんだろう。
死ななければ、折れた腕も時間が経てば治る。
この子の心の痣は完治することはないんだろう。罪悪感はどこか必ず持って生きていくのだろう。

でもさ、それってなんだか無責任じゃないかな?
そんな他人の人生を憶測で判断して、かわいそう。自分と一緒だ。なんて無責任すぎて口に出せない。
その子が持つ罪悪感、希望は推し量ることはできるけど、理解することは絶対にできない。だからこそ、理解よりももっと根底にある空間を共有する時間を真剣に考えなければならないと思う。
だからこそ、この映画2時間弱でわかった気になるなんて、ちゃんちゃらおかしいことだし。だったら、観ない方がいい。

この映画の一番言いたいことも、なんだか明瞭には感じなかった。
レオの感情にフォーカスを当てたいならば、レオから離れるべきではなかった。それは、レオから離れてしまうと、それはレオを追体験しているわけではなく、レオが知ってる情報以上のものを観客が手にしてしまうからだ。
レミにカメラが引っ付いていくのもあれだし。
レミのお母さんのPOVもいらないし、レミのお父さんの涙も、レオの目線からだけでいい。
そうやって視線がバラけることで、レオの感じていることがこっちで作り上げるしか無くなってきて、無責任さに苛まれてしまう。

群像劇にするとなると、社会問題で完結してしまってはいけないと思うし。
こんだけ、自然な描写ができるんだから、社会問題よりももっと近くにある、生にしがみついている死の輪郭を表現してほしかった。


花とアイスホッケーは面白かった。
無駄はなかったよね。一つ一つのシーンに意味があって、感情があった。
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