ささやかな日常に、主人公の心の小さな変化を見つめるライカート監督らしい作品。今回は主人公の代わりに鳩が行き止まる。
個展を控えたアーティストの数日を淡々と描く。彫刻家リジー(ミシェル・ウィリアムズ)は、面倒みがよく家族や周囲の人に押し切られてしまう損な性格のせいで創作がはかどらない。いつも仏頂面だ。
隣に住む大家でアーティスト仲間のジョー(ホン・チャウ)とは、性格や創る物が正反対で衝突も多いけど、怪我した鳩を通してちょっとずつ繋がっていく。そのやりとりがユニークに描かれる。どこかで認め合っているのは芸術家同志だからなんだろう。ジョーをモデルにしたオブジェがあるのが微笑ましかった。
個展でふるまうチーズの量の多さを気にする神経質なリジー。そのチーズをバクバク食べる無神経な兄との性格の違いが面白い。リジーは父も母も兄も自由にふるまう芸術家一家の犠牲者でもある。
創作活動の苦悩と悦び、芸術家へのリスペクトも伺える作品だった。釜でうまく焼けなかったオブジェがまるでリジーの人生のように思えてくる。作品がどれもよかった。
最後はジョーの存在によって、鳩が空を羽ばたくようにリジーの心も軽くなったんだな〜としみじみ。開放感のあるラストでした。
今回は犬ではなく猫と鳩が活躍。