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ジェントルマンのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ジェントルマン(2021年製作の映画)
3.5
 ジェントルマン=紳士らしく行こうとのことなのだが、物語の語り口があまりにも下手過ぎて、クエンティン・タランティーノにもガイ・リッチーにもなり切れていない。ごく小粒の印象に収まる。依頼された事件は100%解決するが売り文句の興信所社長チ・ヒョンス(チュ・ジフン)は、単なる犬の捜索を依頼される。依頼人の少女とペンションに向かうと謎の男の襲撃を受け、意識を失ってしまう。気がつくと少女は消えており、ヒョンスは誘拐事件の容疑者にされているといういわゆる巻き込まれ型のノワール・サスペンスの王道パターンなのだが、それならばサスペンスに徹するべきではないだろうか。主人公があっという間になすすべもなく逮捕されるのだが、一瞬の機転で検事と誤解されたヒョンスは、消えた依頼人を捜すため、検事になりすまして捜査を開始するというコメディ・タッチな展開に舵を振ったのがやや強引と言えば強引な印象で、ここはある種一発、主演のチュ・ジフンの雰囲気に全てを託したようである。

 タイムリミットは本物の検事の目が醒めるまでの1週間ということなのだが、マジレスすると意識が戻るまでには人により個人差があり、このような荒唐無稽な設定を施した時点で最初からかなり無理があるのではないか。韓国映画は悪役の配役こそが肝で、悪徳の元検事を演じたパク・ソンウンの脂ぎった狡猾さが滲み出る中盤辺りからはなかなか良い感じなのだが、監督のキム・ギョンウォンがチュ・ジフンがスパークしなかった際のことを考えて無理やり捻り出したチームが、図らずも今作ではかなり重要な意味を持つ。巨悪に噛み付く野良犬たちの下剋上の物語こそが韓国産映画の真骨頂で、ど底辺の登場人物たちはなんとかパク・ソンウンを天国から地獄へ引き摺り込もうと手練手管を繰り広げるのだが、その方法論がどれも中要で我々のイマジネーションを越えて来ない。唖然とするような二転三転する展開も極めてTV的なドラマツルギ―で、狂言廻しであるはずのチェ・ソンウンの忍び込み方がかなりの期待外れで、フリーキーな狂気が感じられない。何より二転三転する物語のイマジネーションの源泉が決定的に弱い。
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