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花様年華 4Kレストア版のhirobeyのネタバレレビュー・内容・結末

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

"花様"…花の様な、"年華"…時間、年齢。
つまり、人生において、満開の花の様に煌びやかな輝いていた頃という意味だとか。

そういう意味から言えば、トニー・レオンの優しさ溢れる格好良さは分かるが、それ以上に、マギー・チャンの何と美しく妖艶なことか。隣にこんな女性がいたら、誰でも親しくなりたい(健全な意味で)と思うのは当然かと。本作では、互いに不倫されている側という関係性でもあった。

彼女は全編に渡り見事に様々なチャイナドレスを着こなしていた。いずれも襟の高いタイプで、色も柄もハッとするほど画面に映える。そのあたりは、監督の狙いもあったかと。狭い階段を登る彼女の後ろ姿に完全にやられたのは言うまでもない😆

1962年からの数年間の物語。香港のしっとりとした空気感漂う中で、プラトニックな男女が描かれている。

ハンドバックとネクタイで不倫を確信する2人。レストランでステーキを食べる2人。大家さんが知人と麻雀を始めてしまって、部屋から出るに出られない2人。互いの配偶者に対するシミュレーション?をする2人。どのカットも印象深く、無駄がなくテンポがいい。

それぞれの配偶者は存在しているものの姿はほぼ出さない。路地裏の夜の雨が効果的に2人の距離を縮めている。鏡に映る姿だったり、狭い空間だったり、壁越しの絵だったり、全体の映像にかかる色彩だったり、ウォン・カーウァイ監督の絵作りを堪能することができた。そして、音楽もまたこの官能的なもどかしい時間を心地よく包んでいた。

カンボジアのアンコールワットで彼が壁の穴に向かって1人語った秘密は。そして、ラストシーンの彼女の子供は?とても、意味深なカットだった。

変えられない変わらない過去。誰にも言えない想い。輝いていたころを懐かしむような、或いは少し悔やむような、別れはやむを得なかったと納得しているのか、自らに言い聞かせているのか、また、もしかしたら、2人に新しい展開があるのかと、観る人の想像を掻き立てるような演出。

たまたま夜中に目が覚めて、撮り溜めていた中から選んだ本作。それがかえって、1人で静かに作品の雰囲気を味わうことができたように思う。
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