このレビューはネタバレを含みます
「"湿地の娘"がチェイスを殺した?」
湿地で青年の変死体が見つかり、そこに住む"湿地の娘"が殺人の容疑をかけられる話。
全編にわたって彼女の壮絶な生い立ちと2つの恋が語られ、その悲しすぎる人生に息を呑む。
個人的には初彼・テイトとのエピソードが結構キツくて、家に残った彼のシャツの匂いを嗅いで嬉しそうな顔をしたシーンの後に、テイトが約束した日に戻って来なくて一人で花火を見て朝まで待ってるシーンは悲しすぎた。初めて口紅塗って綺麗な格好までしてるのが余計に…。
DV&浮気彼氏のチェイスはまじクソで、殺されてもしゃあないやって感じだったけど、そのタイミングで救世主としてテイトが戻ってきたのはビックリした。その後ハッピーエンドっぽくなるのも良かったんだけど、まさかテイトが人生の最期に絶望を味わうことになるとは…。
無罪を勝ち取ってからの最後のどんでん返しは強烈で「時には獲物が命を繋ぐため、捕食者を葬ることも──」というモノローグと一緒に、テイトが貝殻の首飾り見つけたシーンにはビックリ。結局殺してたんかい!という…。
弁護士のミルトン爺さんは仕事デキるし差別しないしマジかっこいいと思ってたけど、ラストシーンを見るとみすみす騙されてしまった格好というのがなんとも皮肉…。あんなにカイアのために手を尽くしてくれたのに…。
「自然に善悪はない」っていうカイアのさりげないセリフも伏線になってるのね。最初は可哀想な少女の恋愛劇かなと思ってたけど、これはすごいミステリーだ。
以下、セリフメモ。
「湿地帯の中に点在するのが、"本当の沼"。沼は死を熟知してる」
「死因は地上19mからの落下による衝撃。やぐらの梁に血痕と毛髪が付いてた。つまり落下中に後頭部を打ったんだ」
「後ろ向きに落ちたってことだな。誰かに押された?」
「彼のジャケットに赤い繊維が付着してた」
「犯人はあの妙な"湿地の娘"かも。やりかねない」
「殻に籠る者は忘れられる。昔は家族がいた。私を"カイア"と」
「危ない時は、ザリガニの鳴くところまで逃げろ。母さんの口癖だ」
「私は父と暮らすコツを学んだ。とにかく避けて、会わずに過ごす」
「テイト。彼は強張った私の心をほぐしてくれた」
「学校は(DOGのスペルが分からず笑われた)あの日だけ。自然が私の教師」
「母の物は全て焼かれた。しばらくして父も去った。淡い悲しみ」
(黒人店主の営む店で)
「ムール貝を買って。今朝とってきたの」
「聖書にはこうある。"小さき者への施した行為は、すなわち私への行為なのだ"。教えてに従って」
「僕が(読み書きを)教えようか?」
「(湿地の娘と会うのを)自制しろ。大学で勉強したいんだろ?人生は一瞬で変わる」
「会うのはよそで!福祉課に捕まったらグループホーム送りよ」
「読み書きを教えたり、物をくれたりしたのはなぜ?恋人はいないの?」
「母と妹はアシュヴィルで事故で死んだ。僕の誕生日プレゼントの自転車を他の街へ買いに行ったせいだ」
「これで恋人?」
「なりたいの?」
「羽に詳しいの。他の人とは違うでしょ」
「ああ、決まりだ」
「テイト、私は平気。なぜ?」
「君を大切にしたいから。僕は簡単には傷つかないけど、君にはリスクがある。そうだろ?」
「僕はこの街を出る。進学だ。生物学の研究室で来週からアルバイトをする」
「親と同じエビ漁師は嫌だ。約束するよ。必ず戻ってくる」
「出版社のリストだ。湿地を描いた君の絵は他にない。本を作ればお金を稼げる」
「…私を忘れるのね」
「忘れるもんか。それに、1ヵ月で戻る。独立記念日だ」
「テイトは私の人生。そして愛…。全てを失った。湿地はつまずく私をいつも抱きしめた」
「あなたの家だ。権利はあなたにある。維持滞納費を払えばね。800ドルだ」
(チェイスに押し倒されて)「私を軽く見ないで!」
「いきなり迫ったのは悪かった。でも君のことを知りたいんだ。君は綺麗だし、風のように自由だ。どうだい?」
「…いいわ」
「彼のことが好きか嫌いか分からない。でも孤独じゃない。それで十分だった」
「今度アシュヴィルまでの仕入れに行くんだ。一緒に行かないか。出版記念のお祝いもしたいし。仕入れは2日かかる。一泊しないと」
(事後に)「そのうち感じてくる。一度じゃ無理だ。俺だけの湿地の娘。君の価値を知っているのは俺だけでいい」
「捨てられた彼女(カイラ)が息子を殺して奪ったのよ。あの醜い首飾りを!」
「湿地の娘のセックスはどうだった?」
「ヤマネコみたいに目が光るぞ。イッた後はな。ははは」
「君を傷つけたと分かってたから会えなかった。あれは僕の人生最大の過ちだ。君と外の世界を天秤にかけたんだ。でも外の世界の学歴も君なしでは意味がない。一生後悔するだろう」
「僕はもう去らない。どんな償いでもする。どうすれば許してくれる?」
「あなたが湿地の娘ね。初めまして。私はチェイスの"婚約者"よ」
「一人きりの生活。昔から知ってた。…人は去る」
「こんな形になって残念だって何?婚約者がいるのに私と付き合ったこと?自分の嘘がバレたこと?」
「母が去った理由がやっと分かった。父のような男たちは最後に必ず自分が殴る」
「そんな暮らしはイヤ。次はいつ殴られるのかと怯えて暮らすのは…」
「私じゃない。嫌ったのは彼ら(街の人)よ。悪意を持って蔑んだ。そんな人たち(陪審員)に懇願しろと?絶対にイヤよ」
「彼女にはアリバイがある。そして検察側はこれが殺人だと立証できていません。ただの推察だ」
「"我々陪審員は、被告人キャサリン・D・クラークを無罪とします"。勾留中の無礼をお許しください」
(ボートで羽を受け取って家へ行き)
「カイア、君を愛してる」
「結婚しないか?どう思う?」
「もうしてるでしょ。ガンのつがいと同じように決まっているのよ」
「それで手を打とう」
「世を去るときは、ひそやかにすうっと消えたい」
「湿地は死を理解してる。そして死を悲劇にしないし、妻にもしない。どんな生き物も生存のために奮闘する。時には獲物が命を繋ぐため、捕食者を葬ることも──」
「私はホタル。明滅し湿地の奥へとあなたを誘う。そこが私のいる場所。遥か遠く、ザリガニの鳴くところ」