スワヒリ亭こゆう

スイート・マイホームのスワヒリ亭こゆうのネタバレレビュー・内容・結末

スイート・マイホーム(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

シネフィルが撮ったからこそ、めちゃくちゃ面白いホラー映画になったと思います。
こういうのが観たかったんだよ!って思わせてくれる映画を撮った斎藤工さんは流石だと思います。

ヒッチコックの様な緊張感がずっと続くんです。
どこに?何が?なかなか見せない。
一体、何が起こってるのか分からない。分からないのが怖いんですよ。
何も考えない人はオチになる人物の予想がついたって言うでしょう。そんなのは3択、4択のうちのどれかに決まっているんです。【誰】が恐怖の根源かはそんなに重要じゃないんです。
その恐怖の根源に辿り着くまでが、非常に上手に撮っているのが凄いんです。
例えば家の空調を保つ為に地下にデカいエアコンを設置する。その為に地下室を家に設けるんです。
その地下室に行くのを主人公・賢二(窪田正孝)が閉所恐怖症という設定にして、安易に地下室に近づけなくする。まるでヒッチコックの『めまい』です。
この閉所恐怖症の気持ち悪い感じの映像が非常に巧い。

家というのを恐怖の対象にするのはホラー映画としては有りがちですね。
斎藤工監督はセオリーは無視しないんです。
ホラー映画を冒涜する様なセオリーを無視した事はしない。寧ろホラーの原点に帰ってる。
だからこそ、現代では新しく思えるし面白いんだと思います。
ホラー映画ですが、スリラー映画といった方がどういった映画なのか伝わるかもしれませんね。
賢二の周りで歪みが生じる。それは小さいものだったのが、どんどん大きくなってきてパニックになる。
そして気づいた頃にはとんでもない事態が起きて収拾がつかない程になる。

本作の評価の低さは恐らく、ラストでしょう。
赤ちゃんが犠牲になったのに、引いてしまったんでしょうね。
子供や赤ちゃんが犠牲になると引いてしまうのは仕方がないんですけど作品を楽しむ上では勿体無いですね。
僕は『ホームアローン』は最後にマコーレ・カルキンが殺されたら最高のオチになるのになぁと思っている人間なので、本作のこのぐらいの強烈なオチほどんどんやって欲しいです。
蓮佛美沙子さんの恐怖で心が壊れていく演技が凄くて、とっても良かったです。
窪田正孝さんも、どこか軽薄な人柄に感じてしまうのが良いですね。本作の主人公にピッタリで監督の手腕の凄さだと思います。

終盤に黒幕が誰か分かってから、思い返すと不自然、理不尽な事が多々出てきます。
奈緒さん演じる本田がおかしいのに何で会社は雇っているんだ?というのは思ってしまいますね。
赤ちゃんの瞳に映っていたのも、振り向けば直ぐに本田が家にいるってバレるし、本田なら賢二の妻・ひとみ(蓮佛美沙子)はそこまで怖くなかったんじゃないのかな😅
ツッコミどころは確かにあるんですけどホラー映画というのは思い返せば無理が生じてくるもんです。観てる時に怖がらせれば勝ちなので、野暮ったいことはこの辺にしましょう。
それよりも本作はやっぱり褒めたいですしね!
斎藤工さんの次回作も楽しみになりました。

余談ですが、映画館のマナーの悪い客がいたので愚痴らせてください。
ホラー映画で緊張感のあるシーン。観客が息を呑み、眼を見開いてる人、目を背けて怖がってる人がいそうな大事なシーンで、デカいクシャミをする人がいたんですよ。これは絶対にダメですよね。映画関係なくビックリするわ!僕の通路挟んで斜め後ろの席にいた如何にもデリカシーの欠片もないオッサンでした。
仕舞いには2回ぐらい屁こいてやがる。
前の座席に人がいないからといって足を席の上に載せていたりとやりたい放題でした。生理現象だからと言えクシャミも静かに出来るじゃないですか。
デカい声で「ハクショーン」は絶対にダメですね。
1日は映画料金が安くなるのは良いんですがマナーの悪い、映画にリスペクトが感じられないバカな客も来る日ですね。良い映画に水を差された感じがしました。