ゆめちん

シスター 夏のわかれ道のゆめちんのレビュー・感想・評価

シスター 夏のわかれ道(2021年製作の映画)
4.0
シスター 夏のわかれ道
 
看護師として働きながら、医者になるため大学院進学を目指すアン。ある日、疎遠だった両親が交通事故で亡くなり、初対面の弟ズーハンが突如目の前に現れると、姉だからという理由で親戚から養育を押し付けられてしまう。
 
疎遠だった弟と暮らすことになった姉の成長物語というと、ありがちな話に思えるが、じつは中国で2014年まで実施されていた "一人っ子政策" と、未だに根強く残る "男尊女卑" が招いた中国の闇に鋭く切り込んだ作品であり、興味深く鑑賞した。
 
全く疎遠だったとは言え、幼い弟のことが邪魔で養子に出そうとするアン。最初は "なんて薄情なんだ・・" と思ったが、次第にアンの過去が明かされその理由が見えてくると、彼女に共感せずにはいられなくなる。

特に衝撃的だったのは、第一子として生まれてきたアンに障害者のふりまでさせ、第二子を産む許可を得ようと策謀する親の逸話。一人っ子政策が引き起こす混乱は想像を絶するもので、その犠牲者であるアンがあまりにも気の毒でかわいそう。
 
アンと伯母が西瓜を食べるシーンがこの作品の山場。伯母が西瓜の真ん中をアンに与えながら、"自分の人生" を生きられなかった思いを吐露しつつ、姪には未来へ羽ばたくよう促す。この伯母の心情変化がアンの気持ちと共振し涙を誘い、そこには女性である監督や脚本家の思いがしっかりと込められていた。
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