てっぺい

かがみの孤城のてっぺいのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
4.0
【館を出ても続く映画】
ラストで一気に回収される伏線の数々にスカッと驚く。豊かな映像表現や骨太メッセージもさることながら、入場特典に映画の続きが記される、映画館を出ても映画が続く感覚になれる新しい体験も。

◆トリビア
○ 原作小説は、2018年本屋大賞を史上最多得票数で受賞、「ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR2021」(文庫部門)など9冠に輝き、累計発行部数は現在160万部を突破した。(https://movies.shochiku.co.jp/kagaminokojo/)
〇北村匠海は4時間に及ぶアフレコの際、感情の振り幅を表現するため休憩を取らなかった。監督はそんな北村に”役者魂”と”高倉健感”を感じた。(https://www.fujitv-view.jp/article/post-747106/2/)
〇学校プレミアイベントの際、北村匠海は高校生の時のあだ名が「ジジイ」だったことを思い出した。(https://hochi.news/articles/20221205-OHT1T51157.html)
〇芦田愛菜は、キャスティングされるずっと前に原作者と対談の機会があり、もし原作が映像化されて、芦田が何か役を演じるならオオカミさまを演じてほしいと言われていた。(https://natalie.mu/comic/news/506322)
○ ミステリーは設計図を書く人も多いが、原作者の辻村深月が本作の“3月30日”という城の秘密を思いついたのは135ページまで書き進めた後だった。(https://s.kakaku.com/tv/channel=4/programID=25660/page=38614/)
〇監督の肝入りシーンは、こころと東条さんがふたりでアイスクリームを食べながら話す場面。お互いに距離があったふたりが久しぶりに会い大切な時間を過ごしている場面で、あまり語りすぎない方がいいと考えた。(https://cinema.ne.jp/article/detail/50681)
〇麻生久美子が原監督作品に連続でキャストされているのは、シンプルに監督が麻生を好きだから笑。(https://cinema.ne.jp/article/detail/50681)
〇城の中の床や壁、柱は大理石という設定なので、スタッフの作業や労力が単純に倍になるが、監督は徹底的に映り込みをさせる決断をした。(https://ure.pia.co.jp/articles/-/1687203)
○ 本作の公開を記念し、武富智による本作のマンガ版1、2巻分のエピソードが2023年1月6日まで無料公開される。(https://natalie.mu/comic/news/505456)
〇入場者プレゼントは、登場人物のその後のシーンを描いたポストカード。辻村深月の新たな原案を、キャラクターデザインの佐々木啓悟(A-1 Pictures)がイラストとして描き下ろしたもの。2枚セット×3種類(全6枚)がランダムで配布される。(https://eiga.com/news/20221215/10/)
〇本作のアニメ製作「A-1 Pictures」の2022年公開アニメ作品の総尺は1223分。単純計算で1日約3分のアニメを製作しており、ネットでざわついた。(https://www.oricon.co.jp/news/2260844/)

◆概要
【原作】
「ハケンアニメ!」辻村深月による同名小説
【監督】
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」原恵一
【声の出演】
當真あみ(14代目「カルピスウォーター」CMキャラクター。オーディションで1000人以上の中から主人公に選ばれた)
北村匠海、、吉柳咲良、板垣李光人、横溝菜帆、高山みなみ、梶裕貴、麻生久美子、宮﨑あおい、芦田愛菜、藤森慎吾、滝沢カレン、矢島晶子、美山加恋
【公開】2022年12月23日
【上映時間】116分

◆ストーリー
中学生のこころは学校に居場所をなくし、部屋に閉じこもる日々を送っていた。そんなある日、部屋の鏡が突如として光を放ち始める。鏡の中に吸い込まれるように入っていくと、そこにはおとぎ話に出てくる城のような建物と、6人の見知らぬ中学生がいた。そこへ狼のお面をかぶった少女「オオカミさま」が姿を現し、ここにいる7人は選ばれた存在であること、そして城のどこかに秘密の鍵が1つだけ隠されており、見つけた者はどんな願いでもかなえてもらえると話す。


◆以下ネタバレ


◆伏線回収
オオカミさまとは誰なのか。同じ中学校なのに出会う事がないのはなぜ。アキが制服姿で動揺していた訳とは。そして繋がる喜多嶋先生の正体。そんな謎が一気に明かされる、ラストの怒涛の伏線回収が見事。リオンの姉の病室にある置物まで、至る所に散りばめられた伏線に気づく、スカッと驚く原作力と脚本力が素晴らしい。さすが本屋大賞受賞だし、3月30日をリオン姉の命日とするアイデアを執筆の途中で思いついたというのだから信じられない。伏線回収ではないが、入場特典に7人のその後が描かれるというアイデアも秀逸。映画館を出ても映画の続きを感じられるこの手法には本当に驚いた。

◆映像表現
人は見えないものに最も恐怖を感じるという話がある。アキを襲おうとした親戚の顔の塗りつぶし。こころの家にまで押しかけてきた真田達も、カーテンと窓越しのシルエット。こころがアキ達の記憶をフラッシュバックするいじめの回想シーンにも、顔のない表現があり、陰湿な恐怖が映像として強調されていたと思う。また孤城の中では地面も鏡のように反射して全体的に鮮やかで美しい印象なのに対して、実世界では、特にこころの部屋が薄暗く、対照的に強調されていたと思う。エンドロールの、儚く消えていくリオン姉が最後に消えたカットには、彼女が見守るこころとリオンがいる、あのあたたかすぎる表現も素晴らしかった。

◆メッセージ
こころがアキと風歌にいじめを受けた過去を打ち明け、自分の心を解放する事で、母にもそれを告白する事ができた。その事で母親も、本当の意味でこころの傷を理解し寄り添う事ができた。あのシーンが何よりも尊い。こころの時代にも、嬉野のいる未来にも、人間である限りいじめはある意味普遍のものであって、大事な事はあの7人のように居場所を見つける事。居場所を与えられる事。居場所がなく苦しみ続けたこころが、リオンと笑顔で前へと進んでいく、あの足元がラストカットである事が全てを物語っていた。多感なまさに今の中学生やその関係者に本作をたくさん見てほしいし、自分もどこか前向きな気持ちになれる素晴らしい作品でした。

◆評価(2022年12月23日現在)
Filmarks:★×3.9
Yahoo!映画:★×4.0
映画.com:★×3.9

引用元
https://eiga.com/amp/movie/96695/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/かがみの孤城
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