ゆめちん

不思議の国の数学者のゆめちんのレビュー・感想・評価

不思議の国の数学者(2022年製作の映画)
4.0
不思議の国の数学者

"数学が北朝鮮では兵器開発に、韓国では大学受験の道具に利用されている"

学問と思想の自由を求めて脱北した天才数学者のハクソンは、正体を隠したまま、名門私立高校の夜間警備員として働いていた。無愛想なハクソンは学生たちから避けられていたが、学生のジウから苦手な数学を教えてほしいと頼まれる。

脱北した天才数学者ハクソンと挫折寸前の劣等生ジウ。現実に失望しかけた二人が出会い、数学を通して人生を見つめ直していく物語。

数学は "考える過程" が大事だと説くハクソン。ジウに数学の美しさを教えながら、ハクソン自身も人生の意味を再考していく展開に胸が熱くなる。

ピアノが弾けるボラムに伴奏を頼み、円周率の数字に音を当てた "π(パイ)ソング" を奏でる場面は美しく、何度でも聴きたくなる。

チェ・ミンシクの過去の出演作がハードなものばかりなので多少身構えていたが、今作では穏やかな役柄で、その温かみのある演技に心を揺さぶられる。特に終盤の演説シーンは "セント・オブ・ウーマン" のアル・パチーノを彷彿とさせ、年齢を超えた互いへの愛情と敬意にはグッとくるものがあった。
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