ワンコ

スパイダーヘッドのワンコのレビュー・感想・評価

スパイダーヘッド(2022年製作の映画)
4.2
【未来は自分次第】

「未来は自分次第だ」
ただし、僕は、”今の”自分次第なのだと思う。

冒頭にかかる曲は、Supertrampの代表曲のひとつ「The Logical Song」だが、歌詞はこんな感じだ。

“幼い頃、人生は素晴らしいものに思えた。奇跡。そう、美しく、魔法のよう。
(中略)
でも、皆んなは、そんなところから僕を遠ざけて、どうやったら分別があって、論理的で、責任感があって、現実的な人間になれるかを教え込もうとしたんだ。そして、見せたのさ、もしかしたら僕が頼りにされて、客観的で知的、そして皮肉たっぷりになっている世界をね(後略)”
※ちなみに。clinicalは、客観的という意味はあるけども、お分かりの通り、ちょっと病的な意味も含んでいるように思う。

海外も含めて映画評を読んだのだけれども、辛辣なものも含めて酷評が多かったように思う。ただ、まあ、いつものことだけれども的外れなものもあって、僕は、比較的短い作品の中に、対比や皮肉を織り交ぜて、それなりに面白い作品に仕上がってると思った。

ただ、エンディングのはちゃめちゃなところや、ドカーン!みたいなのはちょっと食傷気味に感じたのは確かだった。
これは減点。

過失を必要以上に追い回し、安易に人を追い詰める現代の僕たちの(ネット)社会。

窮屈さに嫌気がさして、安易に開放感を求めようとする世界。

時間をかけて良い方向に導くことだって可能なのに、時短や効率ばかり考えて、安易な方法に飛びつこうとする世界。

これらを踏まえ、そして思慮深く考え、振り返ろうとする人間と、固執し執着から逃れらず暴走する人間。

実は、安易さと、そうじゃないものの対比、そして、そうじゃないものの中にも対比が織り込まれているのだ。

感情とは何か、人間性とは何か。

Supertrampの歌も皮肉たっぷりだが、この映画は、更に一歩進んで、実は「自分次第なんだよ」と言っているのだ。それも「今の」。

海外の某誌のレビューも読んだけれども、こんなのSFじゃないとか言って、結構しょうもなかった。

SFってカテゴリーにするから、こんなことになるんだろうか。

まあ、映画評にも”安易”なものが多いように思うから。

もしかしたら、そんなことも予想して、だからこそ、はちゃめちゃなエンディングなのかもしれない。

やれやれだ。
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