風ゆらり

性の教典 欲望の手ほどきの風ゆらりのレビュー・感想・評価

性の教典 欲望の手ほどき(2021年製作の映画)
2.2
ムードもへったくれもない感想を言うと、『性の経典 欲望の手ほどき』ではなく『拗らせ童貞のワンチャン物語』だと思った。主人公が言う「セックスによって欲望を全て完成させてしまわないことで相手に永遠と夢を抱き続けて詩が書ける」というのも、美学として分からなくはないが、こんな風に相手を偶像化して夢ばかり見ている主人公を恋愛相手のファラがなぜ好きになったのかが謎すぎる。恋愛映画を観ていて思うのは、やはり人は恋愛的側面から「異性」を見ると相手の人間性は見えづらくなってしまうということ。それが恋だから仕方がないと言えばしかたがないが、ファラに比べて主人公にあまりに魅力がなさすぎる。相手に夢を抱いてそれを恋と呼ぶのなら、自分も相手に夢を抱かせる努力くらいしたまえ、拗らせ童貞君よ。という感じだった。途中で美しいアラビア詩などが挿入されてはいたが、ただの童貞のワンチャン物語には荘厳すぎる詩だったためちぐはぐな印象を受けた。また、宗教や民族といった問題を扱っている風構成にはなっていたが、それらが全てとってつけたようで、純愛を書くには力量がないためありがちな葛藤を挿入している印象がありベッドシーンでは白けて笑ってしまった。こういう青年が童貞を卒業したらどんな風に変わっていくのか続きがあるならまだしも、「ワンチャン終了!童貞卒業!」で映画が終わられると、なんとも不完全燃焼な気分になる。宗教諸々の問題はどこいったねん。セックスで全て解決するんかい。セックスへの夢がなくなった後の夢を描くとか、もっとあっただろうよ、と思う。
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