ザ・ホエール
多くの苦難を乗り越えてのブレンダン・フレイザー復帰作。それがいきなりのアカデミー最優秀主演男優賞受賞ということで、公開前から楽しみに。
同性の恋人アランに先立たれてから過食状態になり、極度の肥満体となった40代のチャーリー。アランの妹で看護師のリズに支えられながら、オンライン授業でエッセーを指導する講師として生計を立てていた。
タイトルの由来は、主人公の鯨のように巨大化した体形と、本作で重要なモチーフとなっている "白鯨" からだと想像する。偏見や思想の押し付けを否定し、思いやりを訴えるのが本作の主眼。
舞台劇の映画化ということもあり、物語はほぼアパートの一室、かつ限られた登場人物で展開。ワンシチュエーション特有の張り詰めた空気が漂う中、玄関のドアや廊下を使った演出が効果的で、観客は一瞬たりとも目が離せない。
巨漢男を怪演したブレンダン・フレイザー。歩行の困難さや苦しそうな息遣いなど緻密な役作りと、特殊メイクで伝わりづらい表情や感情を "目の動きで語る" きめ細かな表現力は圧巻。
アカデミー助演女優賞は惜しくも逃したが、チャーリーを献身的に支えるリズ役のホン・チャウの受けの演技も印象深い。